2025年1月21日
菓子の文化を伝える展示をめざして
株式会社虎屋 虎屋文庫 上席研究員 森田 環
虎屋文庫は、昭和48年(1973)に虎屋が設立した菓子資料室。令和5年(2023)に50周年を迎えました。室町時代後期に京都で創業し、御所御用を勤めてきた虎屋には、歴代の古文書、井籠(菓子を運搬する漆塗りの容器)や菓子木型といった古器物のほか、江戸時代の版本などさまざまな菓子関係の資料があり、それらの整理保存を行うことが設立の趣旨でした。所蔵資料は非公開となっていますが、設立以来実施している虎屋文庫資料展でその一部をご覧いただくことができます。
展示は現在、とらや赤坂店内にある、虎屋 赤坂ギャラリーで年1回ほど開催しています。和菓子の歴史や、東西の地域差、菓子の原材料や製造技術など、菓子文化を多彩な切り口で紹介するのが特徴です。令和6年は「包む・彩る・伝える 虎屋のパッケージ」展を行いました。

「包む・彩る・伝える 虎屋のパッケージ」展
会場レイアウトは、たとえば羊羹が主題であれば、導入部分で羊羹色を取り入れるというように、来場者に展示に親しみを持ってもらえるよう、毎回企画に合わせ施工業者と相談をしながらデザインを決めています。
「虎屋のパッケージ」展では、江戸時代に菓子の運搬に用いた重箱や、大正時代末頃から現在までの紙箱類、包装紙や手提げ袋などを紹介。意匠・素材の変化やブランドイメージの確立の過程を追うというコンセプトに合わせ、入口の造作や展示ケースは「箱」を連想させるデザインで統一しました。また、各コーナーにはその時代を象徴する店頭写真をバナー(垂れ幕)にして、当時の店舗に展示品のパッケージが置かれていた様子を感じていただけるようにしました。

箱型の展示ケースと、商品が並んだ店頭写真のバナー。

ケースをのぞけば、パッケージが見える。
展示品は資料だけではありません。虎屋文庫資料展では工場の職人による手作りの菓子を展示しており、これが特徴の一つにもなっています。今回は、江戸時代に宮中に納めた有卦(幸運の年回りを祝う風習)用の菓子が注目を集めました。古文書を参考に「百味箱」に詰めて再現をしましたが、日持ちのしないものが多いためコンディションには気を配り、いつ見てもおいしそうと感じていただけるように心がけました。

「百味箱」(複製品)。5段重のうち1段分を
再現。

朝の準備で菓子を交換。重さは現在の生菓子の約3倍(150g)。
おいしく召し上がっていただくのはもちろんのこと、そこから一歩進んで菓子文化への興味を深めていただけたら……。そのような思いをもって、これからも虎屋文庫は資料の紹介や情報の発信を続けてまいります。
虎屋 赤坂ギャラリー
(住所)〒107-8401 東京都港区赤坂4-9-22 とらや赤坂店 地下1階
- 問合せ
- 03-3408-2402(虎屋文庫)
- 交通
- 赤坂見附駅(東京メトロ銀座線・丸の内線 A出口)徒歩7分
- 開館時間
- 10:00~17:00
- 休館日
- 12月を除く毎月6日
- 観覧料
- 無料
- ホームページ
-
※虎屋 赤坂ギャラリーでは、虎屋文庫資料展以外にも企画展を開催しています。展示内容や開館時間、休館日についてはこちらをご覧ください。