2025年3月17日
いつでも・どこでも楽しめる博物館を目指して
〜鳥の魅力をすみずみまで楽しもう〜
我孫子市鳥の博物館 学芸員 望月みずき
鳥の博物館は、千葉県我孫子市の手賀沼のほとりにある小さな博物館です。日本で唯一の鳥類を専門とする博物館として1990年5月に開館しました。館内には、手賀沼の四季を再現したジオラマをはじめ、鳥の起源や進化、世界の鳥を一望できる展示があり、鳥の多様性や生態を学ぶことができます。また、鳥たちが飛ぶ仕組みや体の構造をわかりやすく解説するコーナーもあり、大人から子どもまで楽しめる内容になっています。
さらに、博物館ではさまざまなイベントを開催しています。毎月、博物館前の手賀沼周辺で自然観察会を開き、鳥だけでなく昆虫、植物などを観察しているほか、山階鳥類研究所と共同で最新の鳥類研究を紹介するオンラインのトークイベントも開催しています。夏休みには、子どもたちの自由研究のヒントになるワークショップも行っています。

鳥の博物館の外観

世界の鳥展示
標本の3Dデータ化で広がる鳥の学び
鳥の博物館では、鳥の剝製や骨格、巣や卵などの標本を収集・保管し、調査研究や展示に活用しています。しかし、破損のリスクがあることから、多数の人が標本に自由に触れる機会は限られていました。そこで、標本を3Dデータ化し、さらに3Dプリントしたレプリカを作成することで、市民がより身近に楽しめるようにする取組を始めています。
この企画が2021年に全国科学博物館活動等助成事業に採択されたことで、鳥の博物館に3Dプリンターを導入することができました。それ以来、剝製や骨格標本など19点の標本データを作成しています。これらのデータはSketchfab(スケッチファブ)で公開しているので、オンライン上で誰でも自由に閲覧できます。剝製標本などのデータを回転・拡大しながら細部まで観察できるのが大きな特徴で、動物のからだを学ぶ授業などの学校教育でもぜひご活用ください。
標本の3Dレプリカは、万が一破損しても館内で再び作成できるため、野外のイベントでも積極的に活用しています。実際にイベントに持ち出すと、子どもたちが鳥の足のレプリカで恐竜の真似をするなど自由に楽しんでいる姿が見られます。足の形から恐竜を連想し、歩き方を想像しながら動きを試すことで鳥と恐竜の関係に気づくきっかけにもなっていました。本物の標本では難しい、身体を使った学びができるのがレプリカの大きな魅力です。こうした体験を通じて、鳥の足の構造や機能に興味を持ち、「なぜこの形なのか」「どのように使われているのか」といった問いが自然に生まれるでしょう。

鳥の足レプリカで遊ぶ子供

企画展で触れる展示として3Dレプリカが活躍
2023年夏には、3Dプリントしたハヤブサの足に色を塗り、ストラップにするイベントも開催しました。剝製や図鑑を観察してリアルな足の色に仕上げる人もいれば、カラフルにアレンジする人もいて、参加者それぞれが思い思いに楽しんでいました。また、イベント中に3Dプリンターを稼働させ、実際に印刷している様子を見られるようにしたところ大変好評で、目を輝かせて興味を持つ子どもや大人の姿が多く見られました。

参加者が塗った足たち

徐々に3Dプリントが出来上がっていく様子に釘付け
さらに、Sketchfab上の3Dデータは日本語と英語を併記して公開したことで、海外の方から「学校や図書館での教育イベントで使ったよ!素晴らしいデータをありがとう」といった嬉しいコメントが寄せられ、国や博物館の枠を超えた学びの場が広がっていったことを実感しました。標本の3Dデータ化やデジタル技術を活用することで、より多くの人に、鳥の魅力に触れ、学び、遊べる機会を提供し、「いつでも、どこでも楽しめる博物館」にしていきたいと考えています。ぜひ、Sketchfabで鳥の標本データを覗いてみてください。
我孫子市鳥の博物館
〒270-1145 千葉県我孫子市高野山234−3
- 問合せ
- 04-7185-2212
- 交通
- ・JR我孫子駅から市内バス(我孫子市役所行き)→市役所前下車→徒歩5分(所要時間20分)
- ・JR我孫子駅から徒歩30分
- ・常磐道柏インター下車、約20分
- 開館時間
- 9:30~16:30(入館は16時まで)
- 休館日
- 毎週月曜日(休日の場合は翌平日休館)、年末年始(12月29日〜1月4日)
- 入館料
- 一般¥300(¥240)、高校生¥200(¥160)
※()内は20名以上の団体料金です。
※70歳以上・中学生以下は無料。年齢が確認できるものをご提示ください。
※障がい者手帳をお持ちの方とその介助者1名は無料 - ホームページ