2025年7月25日
専門性と多様性が交わる場所をめざして
——「外」で生まれた小さな問い
浜松科学館 経営管理グループ 横田誓子
静岡県浜松市にある浜松科学館では、科学の不思議を伝える展示のほか、サイエンスショーや体験型ワークショップ、プラネタリウムを通じて、科学の楽しさを伝えています。館内では「自然・光・音・力・宇宙」の5つのテーマの体験型展示が設けられ、子どもから大人まで、五感で学べる工夫が随所に凝らされています。

展示リニューアルで新設した「みらいーらルーム」
普段は浜松科学館でバックヤード業務を担っている私ですが、昨年、地域の福祉施設が運営する「私設公民館」で開かれたイベントにワークショップを出展しました。都合により有志で参加した形を取ったのですが、科学館の看板を背負わない初めての現場は、手探りながらも新鮮で、参加者と同じ目線で交流できた貴重な機会でした。なにより印象的だったのは、肩ひじ張らずに居られる風通しのよい空間でした。
イベントには、福祉施設の利用者だけでなく、地域の常連さんや通りすがりの人など、実に多様な人々が自由に出入りしていました。そんな中に溶け込みながらふと思ったのです。「ここでは誰が異質なのだろう?」と。奇妙な問いかもしれませんが、その空間の居心地の良さは、誰もがこの場では「異質」でありつつ、そうあること、そのままでいることが自然に許容されていることにあるように感じたのです。そして、私もまた、普段の肩書きを脱いだ“異質”な一人として在ることができたのです。

私設公民館でのワークショップ「光るシラカスをつくろう」
一方で、職場である浜松科学館は「科学」を通して学びと好奇心を育む公共空間であり、その活動は専門性に根差しています。だからこそ、来館者も職員も“科学が好き”という共通点をもって集まり、自然と「同質性」が高まるのかもしれません。そうした場で私たちは、“異質”を無意識のうちに遠ざけてしまってはいないか——そんな問いが頭をよぎりました。
科学館は、誰にでも開かれた場所でありながら、ともすれば、一部の同質性をもった人々で占められる空間になってはいないか?あの私設公民館での経験は、私にそんな問いを投げかけました。誰がいてもよい、何をしなくてもよい。そんな空間に触れたからこそ、科学館のこれからの在り方について考えるようになったのです。
浜松科学館ではいま、誰もが“そのまま”で関われるワークショップづくりや、包摂的な展示の工夫を進めています。科学の専門性を保ちながら、異なる視点や背景を持つ人々が交わり、「ともに科学する」場へと進化していけたら——。科学館の外に出て“異質”な一人になった、あの日の小さなワークショップは、科学館の在り方を考え直す第一歩だったのかもしれません。専門性と多様性が共に息づく場をめざして——これからも模索を続けていきたいと思います。

浜松科学館ちょこっと体験「みんなで1台のビーコロ装置をつくろう」
浜松科学館
〒430-0923 静岡県浜松市中央区北寺島町256番地の3
- ホームページ
- アクセス
- JR東海道本線「浜松駅」から東へ徒歩約7分
- 開館時間
- 9:30-17:00(入場は16:30まで)
※7月20日から8月31日は9:30~18:00(入場は17:30まで) - 休館日
- 公式ホームページからご確認願います。
- 入館料
- 常設展入場料 大人600円、中人(高校生)300円、小人(中学生以下)無料
常設展入場料+プラネタリウムまたは大型映像1回分観覧料
大人1,100円、中人(高校生)550円、小人(中学生以下)無料
常設展入場料+プラネタリウムまたは大型映像2回分観覧料
大人1,300円、中人(高校生)650円、小人(中学生以下)無料
※30名以上でのご利用の場合、団体料金となります。
※プラネタリウム・大型映像の観覧には常設展入場料が必要です。
※70歳以上の方は入場料および観覧料が無料となります。(年齢を確認できるものをご提示ください。)
※身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳等をお持ちの場合は、ご本人と介護者(1名)の入場料および観覧料が無料となります。(手帳をご提示ください。)
※教育目的の団体による利用の際は、引率者の入場料および観覧料が無料となります。