2025年8月28日
支“猿”者に支えられる博物館
公益財団法人日本モンキーセンター 学術部 エデュケーター 高野智
日本モンキーセンターは、愛知県犬山市で霊長類(サルのなかま)に特化した動物園を運営しています。2025年7月末現在、ひとつの動物園で飼育されている種数としては世界最多の、52種の霊長類を飼育、展示しています。

日本モンキーセンターで飼育・展示している霊長類の一部。霊長類の多様性を実感できる。
たくさん種類がいると違いに目が行きますが、共通性にも目を向けてみましょう。ヒトも含めて、霊長類は哺乳類の中の1グループとして同じルーツをもっていますから、たくさんの共通点があります。
たとえば、私たちの手はサルの手そのものです。

ニホンザル(左)とニホンザルの右手(右)。
指紋・掌紋があり、平爪で、拇指対向性のある手は、ヒトが祖先から受け継いだ共通性。
両目が前を向き、距離感をつかめる目のはたらき(両眼立体視)も、樹上生活の中で進化しました。

ボリビアリスザル。霊長類には樹上生活の中で進化した特徴がたくさん見られる。
集団をつくり、メンバーどうしがコミュニケーションを取るのも共通点として挙げられます。つまり、霊長類を知ることは、私たち自身を知ることにつながるのです。

チンパンジー。霊長類ではコミュニケーションが発達しており、それぞれ独自の「社会」をもつ。
そんな霊長類の魅力を多くの人に伝えるために、園を整備し、さまざまなイベントを企画し、SNSなどでの情報発信にも努めています。
しかし、動物園の運営にはたくさんの費用がかかります。およそ700頭いるサルたちに十分なエサを与え、施設を整備し、生き生きとした姿を来園者に見てもらえるようにしなければいけません。一方で、老朽化した設備の修繕や更新も必要です。
そこで、スタッフが知恵を絞り、活動を支援してもらうためのさまざまな工夫をしています。
たとえばエサについては、近隣の農家などから出荷できなかった野菜や果物を寄附していただいて、とても助かっています。
普段の作業で使用する消耗品などには「Amazonほしい物リスト」を活用しています。必要なものをリストに登録しておくと、支援者がリストを見て、必要だと思う物品を購入してくれます。そうして購入していただいた物品が日本モンキーセンターに配達される仕組みです。寄附金とは異なり、こちらでお金を扱うことなく、物品で支援してもらえるのが特色です。購入していただいたものは、日本モンキーセンターのホームページでお礼の言葉とともに報告しています。また、物品支援の独自の取り組みとして、「中古でもいいのでほしい物リスト」も運用しています。

「Amazonほしい物リスト」で支援していただいた物品の例と、そのお礼。

「中古でもいいのでほしい物リスト」の支援品の例。
大規模な修繕などには、クラウドファンディングを実施しています。2024年に実施したクラウドファンディング「動物たちのくらしをまもり、未来へつなぐ!」では、目標を上回る1,600万円を超える寄附をいただきました。この寄附金で空調設備や動物病院の検査機器を更新したほか、傷んでいた剥製標本の修復もおこなうことができました。

クラウドファンディングの寄附金で、傷みの進んだ剥製標本を修復することができた。
支援してもらえるということは、少なからぬ人が日本モンキーセンターに魅力を感じ、未来に残したいと考えてくれているということです。このような支援者のみなさんを、私たちは敬意と親しみをこめて「支“猿”者」と表記しています。
「支猿者」の存在は、お金以上に私たちの心の支えになっています。これからも、支猿者のみなさんとともに歩み続ける日本モンキーセンターでありたいと思います。
公益財団法人日本モンキーセンター
(住所)〒484-0081
愛知県犬山市大字犬山字官林26番地
- 問合せ
- 0568-61-2327
- 交通
- 〈公共交通機関〉
名鉄犬山線「犬山駅」からバス、タクシーで5分、徒歩20分。
〈お車〉
名神高速道路 小牧I.C.及び、名古屋高速道路 小牧線小牧北I.C.から 国道41号線経由 約20分
中央自動車道 小牧東I.C.から 尾張パークウェイ経由 約10分 - 開館時間
- 3月~10月 10:00~17:00
11月~2月 10:00~16:00
(入園は閉園30分前まで) - 休館日
- 10、11月は火曜日、その他は基本的に火・水曜日(1月、2月、7月、9月に集中休園日あり)
詳細は公式ホームページをご確認ください。 - 観覧料
- 大人(高校生以上) 1,200円、小中学生 500円、幼児(3歳以上) 300円
※障害者手帳をお持ちの方と介助者1名は入園料が半額になります(障害者手帳または障害者手帳アプリ「ミライロID」の提示が必要) - ホームページ