2026年1月28日
目黒寄生虫館―信念を貫く小規模博物館の挑戦(後編)
目黒寄生虫館 事務長 亀谷 誓一
◆再登録に向けて
2023年は当館にとって、創設70周年と公益財団法人移行10年を迎えるアニバーサリーイヤーでした。特別展は例年より規模を広げ、限定Tシャツも作製しました。
そんな折、71年目の当館がどこに向かうかの指針となったのが、同年施行された「改正博物館法」とその改正の背景となった議論(文化審議会博物館部会答申)です。これからの博物館への期待や果たすべき役割が示されたことは、館の運営をみつめ直すきっかけになりました。
70周年記念特別展「亀谷(かめがい) 了(さとる)と亀谷俊也が遺したもの・こと」より
そのひとつが、法改正により新しくなった博物館登録制度です。新制度に対応できるのか不安はありましたが、条文を読む限りなんとかなりそうです。
第3条第3項では、地域の多様な主体との連携・協力による文化観光その他の活動を図り地域の活力の向上に取り組むことが努力義務とされましたが、もとよりスーツケースを抱えた観光目的の来観者が多く、文化観光への対応には胸を張れます。また、最近は企業や自治会などからイベントのお誘いをいただくようになり、連携事業も増えていました。
一方、同じく努力義務である資料のデジタルアーカイブ化はまったくなかったわけではないものの、一部の資料のネット公開に留まっていました(編集部注:デジタルアーカイブの公開は登録基準ではありませんが、改正博物館法において「博物館の事業」のひとつに新しく加わったものです)。
企業/地域連携では閉館後のガイドツアー等を開催
せっかくなら確実に申請を通したいとの思いを胸に、2年度目の翌2024年度には、「国際博物館の日(5/18)」や「教育・文化週間(11/1~7)」の冠イベント、「教員のための博物館の日」への参画など、博物館活動の充実を図りました。それも学会発表や実験・調査等の研究活動と同時進行です。事務を含めて職員は6人。手分けしながら各事業の準備を進めていきます。これだけの業務をこなすには、とにかくフットワークの軽さがものを言います。限られた時間の中でも密度の濃い運営が行えるのは、小規模館ならではの強みといえるでしょう。
国際博物館の日記念イベントのミニ解説会
デジタルアーカイブの公開については、国立科学博物館が運営する自然史標本等のデータベース「サイエンスミュージアムネット」を利用する方向性で決まりました。そして2025年2月末に東京都教育庁に問い合わせ、いよいよ申請に取り掛かります。ほぼ全資料の目録をメールで送り、数点の質問を兼ねた事前打合せが7月半ば。その翌日に申請して、9月5日付で再登録の通知を受領しました。最初の問い合わせから約半年。ほら、思った通りなんとかなりました。もっとも、これまでの活動実績を鑑みれば、改正初年度に問い合わせても十分に再登録の目途はたてられたはず。しかし、より高みを目指したことで、結果的に申請から2か月弱というスピード認定に至ったものと自負しています。
所蔵する蝋模型は3Dモデルを用いて公開
「仁吉3D」
◆登録のススメ
ところで私は博物館職員の傍ら、大学で博物館経営論を教えています。
東京教育庁から再登録の通知が来たのは講義最終日で、学生たちに速報を伝えました。これから当館のプレゼンスは格段に向上すると、期待を込めて解説したのです。
博物館界隈から「登録のメリットがない」という声が聞こえることがありますが、そんなはずはありません。館としては制度の裏付けを持って信頼性や安心をアピールできますし、デジタルアーカイブの公開により国内外から資料にアクセスできれば、研究・教育への貢献度が高まります。他機関と連携することで博物館の価値は魅力ある言葉とともに第三者に広まります。日本の小さな博物館が世界的に認められるチャンスなのだと。
“中の人”の生の声は座学で得た知識と異なる説得力があったようで、講義の感想文の中には労いの言葉も数多くありました。
文化庁の登録の証書と観光庁の「心のバリアフリー」認定証が並ぶ入口
登録作業自体は決して難しくなかったのですが、全体としてみたときに再登録があまり進んでいない現状は、お仲間が少なく些か寂しいです。申請を検討中の“中の人”の皆さん、怖気づかずに、まずは自治体の窓口に問い合わせてみませんか。
目黒寄生虫館
153-0064 東京都目黒区下目黒4-1-1
- 利用時間
- 午前10時~午後5時
- 休館日
- 毎週月曜日・火曜日(祝日の場合は翌平日に休館)、年末年始
- 入館料
- 無料(募金箱あり)
- アクセス
- JRほか各線目黒駅西口から徒歩約12分
または各種バスで2停留所目「大鳥神社前」下車すぐ
