2024年8月2日
文化庁参事官(芸術文化担当)付芸術文化調査官 田村順也
世界三大映画祭の一つ、カンヌ国際映画祭が今年も開催されました。
実は、文化庁もこの映画祭にブースを出展していたのをご存じでしょうか?
「日本映画の海外発信事業」の一環として、公式出品の日本映画の広報宣伝や日本映画の情報発信拠点として「ジャパン・パビリオン」、併設見本市である「マルシェ・ドゥ・フィルム」に「ジャパン・ブース」を出展しました。また、パビリオンでは、様々なイベントを実施しました。私もスピーカーとして「国際共同製作映画」についてのパネルディスカッションに2回参加しましたので、その時の様子をレポートします。
ジャパン・ブース。共有ブースとして5社が参加
ジャパン・パビリオン。カンヌの日本映画の情報発信拠点
「アジアからみた欧州との共同製作について」というテーマのディスカッションでは、国際共同製作映画の監督経験のある深田晃司監督と、プロデューサーでシンガポール国際映画祭事務局長も務めるJeremy Chua氏にご登壇いただきました。
国際共同製作映画は、複数の国の映画製作者が関わる難しさもありながら、それぞれの文化が混ざり合い、学びあって映画を作ることは「美しい」と語られたことがとても印象的でした。
1回目の国際共同製作のパネルディスカッションの様子。
「アジアとヨーロッパの共同製作最新事情」のディスカッションでは、「ある視点」部門出品『ぼくのお日さま』(フランスとの共同製作、文化庁文化芸術振興費補助金(日本映画製作支援事業)採択)の西ヶ谷寿一プロデューサーと奥山大史監督、フランスとの国際共同製作映画『真実』の福間美由紀プロデューサー、イタリアのプロデューサーGianni Russo氏にご登壇いただきました。
多国籍で映画を作ることがポジティブに語られ、特に若い映画製作者は国際共同製作映画への関心が高くなっていることが指摘されました。国際共同製作映画による芸術・文化の交流が、映画界をより発展させていくことを感じるディスカッションでした。
2回目のパネルディスカッション。
国際共同製作の仕組みを話す緊張した筆者
他にも、『七人の侍』がクラシック部門で上映されたことに合わせ、「クラシック・フォーカス」を開催しました。そこでは、日本の国立映画アーカイブの紹介とともに、クラシック作品を復元することの意義などをビジネス的な視点から議論しました。また、今年の監督週間(※)に出品された日本のアニメーション映画から、山村浩二監督と久野遥子監督に参加いただき、「日本のアニメーション最前線」などのディスカッションも行いました。
※「監督週間」・・・カンヌ国際映画祭の独立部門の一つ。作家性のある監督が世界に出ていく登竜門的な存在。
さらに、イベントの後には日本と海外の映画製作者の交流会を開きました。
クラシック・フォーカスの様子。
日本アニメーションの最前線の様子。
山村浩二監督と久野遥子監督
どのイベントも満席、時には立ち見が出るほど盛況でした。交流会では、海外の映画製作者から「日本は世界の映画界で外せない地域」、「監督に直接話を聞けて感動した。」、「新進気鋭の監督が目立っており、日本映画の未来は明るいと希望を持った。」などの所感を直接聞くことが出来ました。
今回参加して感じたことは、コロナ禍から脱却して、より映画界を盛り上げていこう、という世界の映画人のポジティブな熱気でした。特に、国際共同製作・人材育成についての議論が活発でした。新しい映画製作の形、新しい才能の発掘が、世界の映画界をより盛り上げることを期待した前向きな議論が多くなされました。そのポジティブさに私も影響を受け、これから仕事を進めていく上で、参考にしていきたい姿勢だと感じています。
文化庁は、カンヌ国際映画祭を通じて、国際共同製作映画の支援について発信し、日本と海外の映画製作者と交流・議論をする場を作りました。今後、こういった機会を充実させ、これからの映画界を担う若い日本の映画製作者の未来に繋げていきます。
交流会の様子。パビリオンに入りきらないほど盛況。