2015年5月1日
松永大司と申します。
映画監督 松永大司
2011年3月。
東日本大震災が起きた数週間後,自身の映画監督としてのデビュー作品となるドキュメンタリー映画『ピュ~ぴる』が渋谷ユーロスペースで劇場公開された。
地震の影響で公開が中止になるのではないかという心配の中,余震で上映が中断された時も多々あったが,4週間の公開は無事に行われた。
「ndjc若手映画作家育成プロジェクト2010」で制作した短編映画『おとこのこ』も『ピュ~ぴる』と併映する形で上映をさせてもらっていた。
生涯忘れることのできない劇場デビュー。

それより遡ること10年以上前,僕はNHKのドキュメンタリー番組で観た手塚治虫さんの『トイレのピエタ』というアイデアをいつか映画として撮ってみたいと思っていた。
小・中・高校とサッカー部に入っていたが,映画を観ることは好きだった。
と言っても数ヶ月に一回劇場に行けるかどうか。
それでも『ネバーエンディング・ストーリー』『グーニーズ』『ポリス・ストーリー/香港国際警察』等を友達と一緒に行き,観終わった後はどっぷりとその世界に浸って堪能した。
そして,中学校の卒業式の翌日に,ロビン・ウィリアムズ主演『いまを生きる』という映画を劇場で観て,今まで感じたことのない衝撃を受けた。
映画って凄い,と。
この時の衝撃が,自分を映画の道に進ませた。

©2015「トイレのピエタ」製作委員会
そして2015年6月6日。
初の僕の長編劇映画『トイレのピエタ』が公開になる。
SFでもアクション映画でもない。若くして死を宣告された男が,どのように残りの時間を過ごしていったか,というたったそれだけの物語。
しかし,25年前の自分が『いまを生きる』を観て大きな衝撃を受けたように,『トイレのピエタ』を観たお客さんの心に強く残る作品になれると信じている。
短編映画『おとこのこ』を作った時から,劇場で観てもらうという事を意識するようになった。大きなスクリーンで,他のお客さんと一緒に映画を観るという事を。
『トイレのピエタ』も劇場で見る事でしか感じられないものが間違いなくある。
自宅のテレビでは体感できないものが。
この文章を読んでくれた方が,一人でも多く劇場に足を運んでくれることを切に願います。
【プロフィール】
1974年生まれ。大学卒業後,俳優として矢口史靖監督等の作品に出演。2001年頃から映画制作にも関わり始める。2011年に,友人の現代アーティスト・ピュ~ぴるを8年間追ったドキュメンタリー映画『ピュ~ぴる』を発表。数々の国際映画祭から絶賛される。そのほか短篇映画『おとこのこ』(11)短編映画『かぞく』(11),ドキュメンタリー作品に『MMAドキュメンタリー HYBRID』(13年),『GOSPEL』(14年)がある。現在,短編劇映画の最新作『死と恋と波と』(出演 岡山天音,門脇麦/第32回釜山国際短編映画祭インターナショナル・コンペティション部門正式出品)と,初の長編劇映画となる『トイレのピエタ』(出演 野田洋次郎,杉咲花/第16回全州国際映画祭2015インターナショナル・コンペティション部門正式出品)が公開待機中。