2016年3月2日
「谷本組に呼んで」と言ってくれる人々
映画監督 谷本佳織
先日,知人との食事会に行ってきました。私を入れて計4人。年齢も性別もバラバラな私たちですが,年に数回集まって映画や本の話で盛り上がり,時間を忘れて語り合います。そんな至福の時間の最中,ふと我に返って思いました。
『あかり』を撮らなければこの瞬間はなかったのだ――と。
『あかり』というのは,文化庁委託事業「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト2011」を通じて制作した35mmの短編映画です。この映画は「知的障がい者とその家族」というテーマで映画を作るという,長年の目標を叶えてくれただけではなく,上映後も様々な変化と出会いを私にもたらしてくれました。
『あかり』©2012VIPO
先ほどの知人たちも『あかり』に興味を持ってくださったことから御縁が繋がり,いつしか私の大切な人たちとなっていったのです。
現在,私が制作中の作品で阪本善尚氏に撮影をお願いするきっかけになった経緯も同様です。というのも4年前,『あかり』を観てくださった後に善尚さんはこう言ってくれたからです。
「次の谷本組に呼んでね」
天にも昇る気持ちでした。そのときの嬉しさが忘れられず,「社交辞令だったらどうしよう」という一抹の不安を抱えながら,私のような若手が厚かましくも今回の仕事をお願いしたところ,快諾してくださいました。憧れのカメラマンと撮影できる喜びを日々かみ締めております。
阪本カメラマン(中央)と筆者(左)
脚本家の小松さんとの出会いも『あかり』でした。小松さんの脚本に惚れ込んだ私。一方,小松さんも『あかり』を気に入ってくれて「谷本さんと映画を作りたい!」と言ってくださいました。それ以来,パートナーとして一緒にコンクールやコンペに挑戦しています。
脚本家の小松さん 着物が似合う美人さんです
パートナーという枠を超えて今では大好きな友人の小松さん。私たちの作品はまだ受賞に至っておりませんが,受賞式のコメントは小松さんに対する感謝の言葉にしようと決め,原稿まで用意しているので早く披露したいものです。
その他にも,私が駆け出しの頃から知ってくださっている方々や,『あかり』を好きになってくれた方々からもお声がけいただいており,感謝せずにはいられません。
思い通りにならないことが多く,ときには心が折れそうになることもありますが,そんなとき,「谷本組に呼んで」と言ってくれる人たちの存在が,私にどれほどの力を与えてくれるのか計り知れません。そんな,ありがたい人々全員と「谷本組」を共に実現させる日を夢見て,日々精進しております。
【プロフィール】
1979年生まれ。兵庫県神戸市出身。2000年に渡米しLos Angeles City Collegeにて2年間映画制作を学ぶ。帰国後は大阪でのOL生活を経て,2006年から東映芸術職研修生の助監督として東映株式会社に所属。東映京都撮影所で『大奥』,東映東京撮影所で『はやぶさ 遥かなる帰還』をはじめとする映画やTVドラマ,教育映画など数々の現場に携わる。2009年,アメリカの特撮テレビドラマ『仮面ライダードラゴンナイト』の日本語吹替版演出として演出家デビュー。2012年,文化庁委託事業「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト2011」を通じ,脚本と監督をつとめた35mmフィルムの短編映画『あかり』を完成させる。