2018年11月27日
ふらふらしてる
映画監督 ふくだももこ
「なんかお前,歩き方ふらふらしてるな。大丈夫か?」
先週友達と映画を見ようということになり,昼からちょっと飲んで映画までの時間つぶしに新宿を歩いていたらそう言って笑われた。
3年前,24の時に「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト」で「父の結婚」という映画を撮って,翌年小説で賞をとった。
作品を色んな人に見てもらえた上に,勢いだけの若い子かと思ったら小説も書けるの?ということになり,声がかかるようになった。
今年の初めに派遣OLの仕事を辞めてから映画を撮ってドラマを撮って小説を書いて,寝る間もないほど忙しいわけではないけれど,馬鹿みたいに酒を飲んだり,家に帰りたくなくなったり,小説を読んであほほど泣いたり,7年も付き合った恋人に別れを告げたり,私の知らないところで心は,いろいろ忙しかったんだろうなと思う。
色々あったからなんとなく,漠然と,今年会った人たちとは長い付き合いになる気がする。
なるとええな,と思う。
人との出会いとか“縁”みたいなものだけでやってきた自負はある。
23のとき,映画をやめようと思っていた。
若さゆえの「才能のない自分」にただ絶望していたからだった。
さかのぼれば私が初めて映画を撮った年に“山戸結希”という才能がぴかぴかと発光したのも,大きな要因のひとつだった。
初めて彼女の映画を見たとき「は? なんやねんこれ」と,イキがった中学生みたいな感想しかでてこなかったけれど,それから数年の山戸結希旋風を見て,聞いて,きらいとか悔しいとか憎いとか負の感情が身体中を五周くらい巡って,気付けば大好きになっていた。(「おとぎ話みたい」という映画は宝物で,昨日も夜中の2時に友達を家に呼び出して見た)
ずっと映画を撮り続けていれば,いつか同時期にお互いの監督作が公開になったりして,私の映画のタイトルくらいは彼女の目につくかな。くらいに思っていたから去年の冬,山戸結希本人から「私が企画,プロデュースするオムニバス映画に参加してほしい」と目を見て言われたとき,昼間に食べたセブンイレブンのうどんを吐くかと思った。
『21世紀の女の子』と銘打たれた若手女性監督だけのオムニバス短編映画企画は,才能ある監督と,私みたいに才能はないけど映画と出会ってしまった監督と,一生懸命な大人たちと,山戸結希のマグマみたいな熱量で出来上がっています。
私の作品『セフレとセックスレス』は友達のために撮った映画で,ある季節の,あるラブホテルの,ある数時間だけを切り取った映画で,セフレとの悩みを抱えている誰かの心を軽くできればいいな,と思います。
今日も飲んでしまってふらふらしてるけど,これからも色んなことに絶望しながら映画を,表現を続けていきたいなあ,という宣言のような文章です。


©2019「21世紀の女の子」製作委員会(ABCライツビジネス,VAP)
Produce by U-ki Yamato

【プロフィール】
ふくだももこ
Momoko Fukuda
映画監督/脚本家/小説家
1991年大阪府茨木市生まれ。日本映画学校(現:日本映画大学)で映画を学ぶ。
監督,脚本を務めた卒業制作「グッバイ・マーザー」(2013)がゆうばり国際映画祭2014,第六回下北沢映画祭,湖畔の映画祭に入選。
CM制作会社エンジンフイルムを退社後,フリーランスに。
2015年,内田英治監督のオムニバス映画「家族ごっこ」(2015)の一篇「貧乳クラブ」の脚本を執筆し,劇場公開。
2015年,文化庁事業「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト 2015」に選出。ソニン,板尾創路をキャストに迎え,仕事も恋もドン底な娘が父の再婚に慌てる姿をコミカルに描いた「父の結婚」を監督。
また,2016年に集英社主催のすばる文学賞を25歳で受賞し小説家デビュー。
2017年,小説「ブルーハーツを聴いた夜,君とキスしてさようなら」を発表。
2018年,山戸結希が企画,プロデュースを務めたオムニバス映画「21世紀の女の子」の監督に選出され短編映画「セフレとセックスレス」を監督。
同年,東京国際映画祭の正式出品作品として上映。
2018年10月クールの連続ドラマ「深夜のダメ恋図鑑」(ABC放送)のメイン演出を務める。
MOVIE
監督・脚本「グッバイ・マーザー」(2013)
脚本「家族ごっこ(内田英治監督)」(2015)
監督・脚本「父の結婚」(2015)
監督・脚本「セフレとセックスレス」(2018)
演出(ドラマ)「深夜のダメ恋図鑑」 (2018)
WRITING
すばる「えん」(2016)
すばる「ブルーハーツを聴いた夜,君とキスしてさようなら」(2017)