2020年3月30日
作りたい映画を作る
映画監督 平林勇
短編映画を撮り続けて20年。やっと長編映画を撮ることができました。短編映画ばかり作っていた反動か,154分にもなってしまったのが『SHELL and JOINT』という長編映画です。
主演の堀部圭亮さんとは,『ndjc』で作った『BABIN』を始め,たくさんの短編映画を作ってきました。その『BABIN』が,ロカルノ国際映画祭で上映されたことによって,私の映画人生が変わったと言っても過言ではありません。世界の人々に見せられる作品を作ろうと思いました。
『SHELL and JOINT』は,インディペンデント映画として作られました。主導権が自分たちにありますので,作りたいように作れましたが,予算は限られていますので,小さなチームにしなければなりません。私は,監督,脚本,撮影,編集をやりました。他にも小道具や衣装を探して買うことまでもやっています。プロデューサーも機材を運びますし,エキストラもやりました。
©SHELL and JOINT
『SHELL and JOINT』は,作りたい作品を,人の目を気にすることなく作った作品なので,ちょっと変わった作品になりましたが,幸運にもいくつかの海外の映画祭に選ばれました。
これまで,モスクワ国際映画祭(ロシア),ロッテルダム国際映画祭(オランダ),ヨーテボリ映画祭(スウェーデン),スラムダンス映画祭(アメリカ)で上映されました。すべての映画祭に行って来ましたが,私が伝えたいことが,伝えたい通りに伝わっていました。更に深く解釈してくれた観客もたくさんいました。
©SHELL and JOINT
海外の人たちの意見からは,思いもよらぬ発見をもらうことがよくあります。映画をアートのジャンルのひとつとして捉えているのかもしれないと思います。絵画や彫刻と同列に映画がある感じと言いますか。私はそういう捉え方で映画を作っていますので,私にとってヨーロッパを始めとした海外の人に映画を観てもらう機会は,とても貴重です。
©SHELL and JOINT
『SHELL and JOINT』は日本での公開が決まっています。「劇場がかけたがらない映画」とか「絶対にヒットしませんね」と言われていますが,それを実感を持って受け止められる機会になればと思います。そして,次回作でそれらの意見や体験を取り入れて作るのかは,まだ分かりません。それでも,映画作りは本当に面白くやめられないモノですから。
【プロフィール】
平林勇
1972年生まれ。
静岡県島田市出身。武蔵野美術大学卒業。グラフィックデザイナーを経て,映像ディレクターに。『TEXTISM』(2003)が,イメージフォーラムフェスティバルで大賞受賞。その後,カンヌ映画祭監督週間,ベルリン国際映画祭,ベネチア国際映画祭,ロカルノ国際映画祭,サンダンス映画祭などで短編映画が上映される。『BABIN』(2007)が,ロカルノ国際映画祭で審査員賞受賞。アニメーション作品『663114』(2011)が,ベルリン国際映画祭でSpecial Mention授与,毎日映画コンクール・大藤信郎賞を受賞。初の長編映画『SHELL and JOINT』が,3月27日から劇場公開。