2021年8月12日
立ち向かう、乗り越える
映画監督 金井純一
ndjcで『ペダルの行方』を監督したのが、もう10年以上前。当時のことはほとんど覚えてない、なんてことはなく、昨日のことのように鮮明に覚えています。35mmフィルムでの撮影、編集は、本当に貴重な体験だったなと思います。
さて、2021年9月23日、監督最新作、映画『マイ・ダディ』が公開されます。この映画は、TSUTAYA CREATORS’PROGRAMで2016年に自ら勝ち取った企画です。それから5年経ち、主演にムロツヨシさんを迎え、いよいよ公開となります。
©︎2021「マイ・ダディ」製作委員会
この映画の撮影に至るまで、たくさんの苦労がありました。それは主に脚本に関してかと思います。オリジナル作品の大変さは身に染みていましたが、ここまで何度も練り直した脚本は今までありません。0から作品を生み出す、0を1にするという作業は、逃げ出したくなるほど過酷です。それでもこの映画を届けたい一心で、共同脚本家、プロデューサー達とともに何度も書き直し、納得できる脚本に仕上げました。本直しはndjcでの実習でも相当鍛え上げられたので、今でもその時のことを思い出し、脚本に向かうモチベーションにしています。
©︎2021「マイ・ダディ」製作委員会
4年以上かけた脚本に、ムロさんが出演を快諾してくれました。しかもこの作品が、映画初主演となります。ムロさんにとって、とても大事な作品に『マイ・ダディ』を選んでいただきました。身が引き締まったと同時に、諦めずに脚本を直し続けて本当に良かったと思いました。
©︎2021「マイ・ダディ」製作委員会
そして昨年春、いよいよ撮影へ。しかしクランクイン2日前、新型コロナウィルスの影響で延期となりました。スタッフ・キャスト、みんながショックを受ける中、それでも僕は前を見ていました。見ようとしていた、という表現に近いかもしれませんが。それは、ここまで積み上げてきたものが、そう簡単に壊れはしない、そう思ったからだと思います。ムロさんも同じように、前を見ていました。かけてきた時間が、無駄になることはない。
そして昨年12月、無事に撮影が始まり、クリスマスにクランクアップとなりました。
©︎2021「マイ・ダディ」製作委員会
『マイ・ダディ』は、ある親子の話です。ムロさん演じる父親が、病気になった一人娘を助けるために、様々な葛藤を抱えながら奔走します。コロナを経験した今だからこそ、困難を乗り越えようとするこの親子の姿が、より一層観客の胸を打つはず、そのように思います。
ndjc以降、映画・ドラマ・CMの経験で培ったもの全てを注ぎ込んだ映画です。ぜひ見てください。
【プロフィール】
1983年生まれ、埼玉県出身。大学在学中よりドキュメンタリー作品をはじめとした映像作品を製作。2007年伊参スタジオ映画祭にて『求愛』がシナリオ大賞を受賞。2011年にはVIPOで選出され『ペダルの行方』を監督。ドバイ国際映画祭でアジアアフリカ映画短編コンペティション部門に選ばれる。2012年、短編『転校生』が第7回札幌国際短編映画祭にて最優秀監督賞、最優秀国内作品賞の2冠を達成。2013年11月公開の『ゆるせない、逢いたい』で劇場長編映画デビュー。2013年釜山国際映画祭NewCurrents、香港アジア映画祭、モロッコマラケシュ映画祭、フランスウズール国際アジア映画祭でコンペティション部門にノミネートされ、ウズール国際映画祭では観客賞を受賞した。2014年公開の『さよならケーキとふしぎなランプ』は、吉祥寺バウスシアタークロージングに選ばれた。2020年あいみょんが作詞作曲したDISH//の楽曲「猫」を原案にドラマ化した「猫」(TX)の監督・脚本を務め大反響を呼んだ。