2024年2月16日
想像を超えたところへ
映画監督・藤田直哉
2021年、文化庁委託事業「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト」に参加し、『LONG-TERM COFFEE BREAK』という不倫を扱った作品を監督しました。その翌年には、大衆演劇の世界に生きる子供を題材に、自身の初長編『瞼の転校生』を監督し、2023年のSKIPシティ国際Dシネマ映画祭のオープニング作品として上映していただきました。そして、この作品が今年の3月に一般公開されます。
(C)2023埼玉県/SKIPシティ彩の国ビジュアルプラザ 川口市
私にとって、映画を作るということは、社会に出ることと同義です。
映画制作は常に新しい人との出会いがあります。映画が制作され、上映されるまでには、キャスト・スタッフをはじめとし、配給・宣伝、そして観客の方々。多くの人と出会い、コミュニケーションをとっていくことで、作品を通して新しい自分を発見し、自分の想像を超えたところに到達する瞬間があります。
すごく抽象的な表現ですが、その瞬間こそ映画制作の面白いところです。
(C)2023埼玉県/SKIPシティ彩の国ビジュアルプラザ 川口市
今作で扱っている大衆演劇という題材は、当初、私にとって未知の世界でした。
ある世界を描くということは、その世界に向き合い、調査し、取材し、他者とコミュニケーションをとり、自分の頭と言葉で考え、その世界を理解しなければなりません。
地道でとても覚悟のいる作業です。自分の知らないことを描こうとするのであれば、なおさら覚悟と謙虚さを持って取り組むことが必要です。
(C)2023埼玉県/SKIPシティ彩の国ビジュアルプラザ 川口市
そんな作業を続け、自分を外の世界(社会)に投げ出し、自分の足で歩き、色々な人に助けてもらうことで、私の作品世界が作られていきます。
ある意味では、私にとって普段の社会生活の延長が、作品づくりの核になっているのかもしれません。
(C)2023埼玉県/SKIPシティ彩の国ビジュアルプラザ 川口市
ndjcでは、それまでの自主制作では経験できなかった沢山のことを、経験させてもらいました。映画の世界のプロフェッショナルたちと作品を作るとは、どういうことなのかを知り、毎日が新しいことへの挑戦でした。常に周りのスタッフに相談したり、自分では生まれてこないアイディアをもらったり、とても助けてもらっていました。そういうことを経て、映画制作はチームプレイであり、自分の世界に閉じこもっていては、映画は生まれないんだと、きちんと学ばせていただきました。ndjcで学んだことが今作の制作にとても生きていると強く感じます。
(C)2023埼玉県/SKIPシティ彩の国ビジュアルプラザ 川口市
今作の『瞼の転校生』を含め、自分の映画が多くの人に届き、観た人がその映画を通して、新しい自分と出会い、想像を超えたところへ連れていってくれるような作品になることを願ってやみません。
【プロフィール】
藤田直哉(ふじた なおや)
1991年北海道岩見沢市生まれ。明治大学法学部卒業。
『stay』(2019)がSKIPシティ国際Dシネマ映画祭2020短編部門にてグランプリ受賞。
文化庁委託事業「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト2021」に選出され『LONG-TERM COFFEE BREAK』を監督し、劇場公開。2022年、文化庁委託事業「日本映画の海外展開強化事業」に選出。ニューヨーク現地にて、長編映画企画の研修を受ける。
2023年、『瞼の転校生』を監督。SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2023のオープニング作品として上映され、2024年3月 渋谷ユーロスペース他全国順次公開。