2015年1月6日
沖縄に伝わる宮廷芸能「組踊」
国立劇場おきなわ事業課 川満秀樹
「芸能の宝庫」とも言われる沖縄には多くの芸能があり,大きく「民俗芸能」と「宮廷芸能」の二つに分けることができます。民俗芸能には「エイサー」や「島唄(民謡)」など,宮廷芸能には琉球王国時代に首里王府が中国皇帝の使者・冊封使の歓待儀式で演じた「御冠船踊」や「組踊」などがあります。今回はその中から組踊を御紹介します。
組踊とは,せりふ・音楽・踊りで構成される歌舞劇のことで,形式的には能・狂言や歌舞伎に近いですが,せりふに沖縄の古語,音楽に琉球音楽,踊りに琉球舞踊を用いるのが特徴です。簡単に言ってしまえば,琉球版のオペラをイメージしても差し支えありません。組踊は18世紀初頭の冊封使を歓待するための役職「踊奉行」だった玉城朝薫によって創られ,1719年の尚敬王の冊封儀礼の際に「二童敵討」と「執心鐘入」の2作品が初めて演じられました。朝薫は琉球古来の芸能や故事を基礎にしつつ,公務で江戸にのぼる際に鑑賞した能・狂言や歌舞伎などを参考にして組踊を創り出しました。

組踊「執心鐘入」の一場面
宮廷内で誕生・発展してきた組踊ですが,1879年の王国滅亡で役者や器楽奏者として組踊を支えてきた士族たちが職を失いました。野に下った彼らは那覇の街の芝居小屋に活路を見いだし,組踊も庶民の娯楽へと形を変えることで継承断絶の危機を脱することとなりました。また,同時期に県内各地に伝播した組踊は,各地の村祭りの中での奉納芸能の一つとして伝承され,劇場舞台で見るのとは一味違った組踊を楽しむことができます。

多良間島に伝わる組踊「多田名組」の一場面
その後も組踊は,沖縄戦,沖縄芝居や映画・テレビの隆盛などの危機に直面しましたが,熱意ある人々によって復興を遂げ現在へと継承されてきました。沖縄の宝である組踊は,1972年に国指定重要無形文化財に,2010年にはユネスコ無形文化遺産となり,今では世界的に高い評価を得ています。国立劇場おきなわの組踊養成研修の修了生からは主役級を務める若手伝承者が育っており,また,現代人の感覚にマッチした新作組踊も次々と発表されるなど,再び話題性ある組踊として盛りあがりをみせています。

絵本のスイミーを題材にした新作「組踊版スイミー」の一場面
2月には父の敵を討つ兄弟を描いた組踊「万歳敵討」が上演されます。1756年初演の作品ですが,分かりやすいストーリーとテンポの良い場面展開で組踊初心者におすすめの人気作品です。「万歳敵討」公演で「組踊」デビューをしてはいかがでしょうか。

敵討物の組踊で人気ナンバー1の「万歳敵討」の一場面
国立劇場おきなわ 2月公演 組踊「万歳敵討」
〒901-2122 沖縄県浦添市勢理客四丁目14番1号 国立劇場おきなわ 大劇場
- 問合せ
- 国立劇場おきなわチケットカウンター(午前10時~午後5時30分)
Tel.098-871-3350 - 交通
- バス:勢理客バス停下車 徒歩約10分
車:那覇空港から約20分,モノレールおもろまち駅下車後車で約10分 - 公演日時
- 平成27年2月28日(土) 14時開演
- 御観劇料
- 一般:3,100円 大学生等:2,000円 高校生以下:1,000円
- ホームページ
- http://www.nt-okinawa.or.jp/