2015年2月4日
花のお江戸のアウトロー
『梅雨小袖昔八丈―髪結新三―』
国立劇場制作部歌舞伎課 岡野 豪
江戸時代を代表する歌舞伎作者の一人…河竹黙阿弥。
彼は,泥坊から町のごろつきまで,悪事を働く主人公が活躍する芝居をたくさん残し,盗賊の異名である〈白浪〉から〈白浪作者〉ともいわれました。
同時に,江戸の市井の暮らしや風俗を写実的に描き,江戸時代の現代劇ともいうべき〈世話物〉というジャンルに名作を残します。
そんな黙阿弥の魅力の数々―市井の悪党の活き活きした描写,作品に流れる江戸情緒と季節感―がたっぷり詰まった作品が,今回ご紹介する『梅雨小袖昔八丈―髪結新三―』です。
新三は,人をだまして金をせしめ,楽しく暮らしていけばいいという,ちょいワルな人物。しかし,自分も他人にだまされてしまうという,意外なおっちょこちょいぶりも見せて,憎めない一面もあります。
そんな新三の職業は,江戸の街を行く廻り(出張専門)の髪結。すっきりした男っぷり,粋で格好の良い男です。悪い奴だが,江戸っ子が生み出した,魅力溢れるキャラクターといえるでしょう。
さて,髪結新三の物語とは……。材木問屋白子屋の娘・お熊と手代の忠七は恋仲。そのお熊に婿を迎える話が持ち上がります。悲嘆にくれる二人を見た新三は,忠七にお熊と駆け落ちをするよう言葉巧みに勧めます。新三は,お熊を駕籠で自分の長屋へ送ると,連れ出した忠七を傘で打ち据えて,夜道に置き去りにします。主人の娘を拐かされたと知った忠七は,身投げをしようとしますが,俠客の弥太五郎源七に引き留められます。翌日,源七は白子屋から金を預かり,お熊を返すよう新三に掛け合いますが,新三はこの談判をはねつけます。しかし, 大家の長兵衛には丸め込まれ,お熊を返すことになります。新三に面目を潰された源七は,後日新三を待ち受け,二人は果し合いに及びます。
主人公・新三のいなせな風情と悪党ぶりが魅力的に描かれます。忠七の髪を撫で付ける鮮やかな手さばき,悪の本性を顕す“傘づくし”の啖呵,初鰹に大金を出す気風の良さ,名うての親分をやりこめながら老獪な大家にしてやられる面白さなど,お芝居はみどころの連続です。
この『髪結新三』が,3月の国立劇場(大劇場)の舞台に登場。中村橋之助が初役で新三に挑むほか,充実した配役でお楽しみいただきます。併せて,若衆・傾城・奴の三人が吉原の華やかな風俗を踊って見せる舞踊『三人形』も上演します。
3月は,国立劇場の歌舞伎で花のお江戸の空気をたっぷりと楽しみませんか。

『梅雨小袖昔八丈―髪結新三―』 髪結新三=中村橋之助
国立劇場 3月歌舞伎公演 『梅雨小袖昔八丈-髪結新三-』『三人形』
〒102-8656 東京都千代田区隼町4-1
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- 平成27年3月4日(水)~27日(金) 10日(火)11日(水)は休演日
12時開演 ※12日(木)・20日(金)は4時30分開演 - ご観劇料
- ・1等A席:9,500円 1等B席:6,300円 2等A席4,600円 2等B席:2,600円 3等席:1,500円
・学生 1等A席:6,700円 1等B席:4,400円 2等A席3,200円 2等B席:1,800円 3等席:1,100円 - ホームページ
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