2016年2月5日
15年ぶりの新派公演
国立劇場制作部歌舞伎課 佐藤麻利子
江戸から明治に時代が変わり,自由民権運動が盛んになる中,明治21(1888)年に新しい演劇が誕生しました。芝居といえば歌舞伎を指していた時代に,「歌舞伎(旧派)ではない新しい演劇」という意味から,その演劇は「新派」と呼ばれるようになります。その後も,大正・昭和と数々の名優によって上演が重ねられ,新派は今や伝統芸能の一つとなっています。
新派の作品には人間の哀歓が情緒豊かに描かれています。細やかな情に包まれた日本人の心が,しみじみと伝わってきます。
国立劇場では,昭和47年6月の第1回新派公演以降,『滝の白糸』『婦系図』『日本橋』を始めとする数々の名作を上演してきました。そして,この3月に,平成13年4月公演以来,15年ぶりの新派公演が実現します。3月新派公演では,新派のリーダーであった名優のために書き下ろされた2作品『遊女夕霧』と『寺田屋お登勢』を上演します。
花柳十種の内 遊女夕霧
『遊女夕霧』は,作家・川口松太郎が自作の小説『人情馬鹿物語』の第3話を劇化したものです。昭和29(1954)年初演時にヒロインの夕霧を演じたのは,大正・昭和前期の新派を代表する名女方・花柳章太郎です。好評を博した本作は,昭和39年に演劇評論家によって選定された花柳章太郎の代表的な10作品「花柳十種」の一つに数えられています。
舞台は大正時代の吉原。吉原の遊女夕霧は,自分のために使い込みをしてしまった馴染み客の与之助を助けるため,奔走します。与之助を助けるために訪れた得意先での会話から,夕霧の与之助への想いが伝わります。そして,与之助への愛ゆえに夕霧が下した決断は,現代の観客の胸を打つことでしょう。

遊女夕霧/波乃久里子

番頭与之助/市川月乃助
八重子十種の内 寺田屋お登勢
『寺田屋お登勢』は,劇作家・榎本滋民が,花柳章太郎とともに新派を支える大黒柱として活躍した名女優・初代水谷八重子のために書き下ろしました。初代八重子は二度しかお登勢を演じていません。しかし,深い愛着があったのか,昭和48年に,初代八重子の舞台生活60年を記念して,本人が10作品を選定した「八重子十種」の一つに本作は選ばれています。
文久2(1862)年に起きた「寺田屋事件」を発端とし,実在した寺田屋の女主人・お登勢を主人公に物語は進んでいきます。幕末の動乱期を背景に,お登勢の芯の強さと坂本龍馬への秘めた想いがきめ細かく描かれています。

お登勢/水谷八重子

坂本龍馬/中村獅童
3月は,日本人の美しい心を謳い上げる演劇―新派の世界を御堪能ください。
国立劇場 3月新派公演『遊女夕霧』『寺田屋お登勢』
(住所)〒102-8656 東京都千代田区隼町4-1
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都営バス都03(晴海埠頭-四谷駅)三宅坂下車徒歩1分 - 公演日時
- 平成28年3月3日(木)~27日(日)
10日(木)・11日(金)は休演日
12時開演 - 御観劇料
- ・1等A席:9,500円 1等B席:6,300円 2等A席4,600円 2等B席:2,600円 3等席:1,500円
・学生 1等A席:6,700円 1等B席:4,400円 2等A席3,200円 2等B席:1,800円 3等席:1,100円 - ホームページ
-
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