2016年3月1日
はじめての落語
国立演芸場 演芸課 青柳一成
落語は何も知らなくても楽しめます。とはいえ,少しの予備知識があれば,もっと楽しめるかも。これから「落語デビュー」をする方のために,落語をより楽しむためのヒントを御紹介しましょう。
落語は無限
落語は,着物を着た1人の出演者(「噺家」といいます)が座布団に座ったままで複数の登場人物を演じ分ける芸能です。しかも,小道具は扇子と手ぬぐいの2つのみ。「何か地味…」と思われるかもしれませんが,そんなことはありません。噺家の洗練された仕草や目線,さらに,観客の想像力が加わることによって,落語の世界は無限に広がります。落語は,噺家と観客が一緒になって作り上げるものなのです。
「マクラ」って何?
落語を堪能してもらうためには,観客を噺の世界に引き込むことが不可欠です。そのため,舞台(寄席や演芸場では「高座」といいます)に出てきた噺家は,まずは,世間話や小咄など軽い話で,観客の気持ちを解きほぐします。これを「マクラをふる」といいます。マクラをふって観客の気持ちが和らいだところで,噺家は本題に入ります。そうして,本題の最後は,洒落やウィットに富んだ言葉「オチ」で締めくくります。

〔国立演芸場の高座から客席を望んだところ。意外と客席が良く見えるのです。〕
ネタはいつ決まる?
公演によっては,プログラムを見ても噺家が演じる演目(「ネタ」といいます)が書かれていないこともあります。その場合,ネタは出番の直前に決まります。楽屋には「ネタ帳」という帳面があり,その日出演した他の噺家たちの演じたネタが書かれています。落語の世界には,他の出演者と同じネタや,似たネタをやってはいけないというルールがあるので,噺家は出番前にネタ帳に目を通し,自分が演じるネタを考えます。例えば,「客席に子供がいるので,子供が主人公の話にしよう」など,マクラをふる中でネタを決めることもあります。

〔これがネタ帳。〕
同じネタなのに違う!
寄席や落語会に通いだすと,以前聴いたのと同じネタに出くわすことがあるでしょう。「何だ,同じネタか」と,ガッカリしないで,ちょっと聴いてみてください。以前,聴いたのと違う脱線があったり,短くなっていたり,同じネタであっても噺家の芸風や腕によって,かなり違うことがわかります。一度,聴いたことのあるネタに出会ったら,聴き比べて楽しむ。これも落語の醍醐味です。
落語は個人プレー?
落語は1人の噺家によって演じられるものですが,1つの公演の中では,複数の噺家や,落語以外の芸を演じる出演者(「色物」といいます)が入れ替わりで出演します。公演で最後に高座に上がる噺家を「トリ」といいますが,出演者たちはそれぞれの芸で客席の反応を確かめながら,トリの出番に向かって盛り上がっていくように務めます。落語は一見,個人プレーの世界のように見えますが,実はチームプレーの面もあるのです。プログラム全体の流れにも着目すると,落語の公演はより楽しめますよ。
落語は生で楽しむのが一番。落語が何となく気になっているあなた,迷っていないで,まずは,寄席やホールへ行ってみましょう!
国立演芸場
昭和54年(1979年)3月,国立劇場の敷地内に開場。定席公演はじめ,多くの演芸の公演を行っています。3月,4月に行われる公演について以下にくわしく御案内しています。

〔国立演芸場の高座〕
[国立演芸場] 3月・4月の公演
◎定席公演
- ・3月上席公演:3/1(火)~3/10(木)午後1時開演(3/4(金)は午後6時開演の部も有)
- ・3月中席公演:3/11(金)~3/20(日)午後1時開演(3/18(金)は午後6時開演の部も有)
- ・4月上席公演:4/1(金)~4/10(日)午後1時開演(4/8(金)は午後6時開演の部も有)
- ・4月中席公演:4/11(月)~4/20(水)午後1時開演(4/15(金)は午後6時開演の部も有)
入場料金 一般:2,100円 学生:1,500円 小学生:1,100円 シルバー(満65歳以上):1,300円
◎花形演芸会
- ・3月花形演芸会:3/5(土)午後6時開演
入場料金 一般:1,800円 学生:1,300円 シルバー(満65歳以上):1,300円 - ・4月花形演芸会:4/23(土)午後1時開演
入場料金 一般:2,000円 学生:1,400円 シルバー(満65歳以上):1,300円
◎特別企画公演
「新・旧芝居噺の会」:3/26(土)午後1時開演
入場料金 一般:3,100円 学生:2,200円
◎国立名人会
- ・3月国立名人会:3/21(月・祝)午後1時開演
- ・4月国立名人会:4/24(日)午後1時開演
入場料金 一般:3,100円 学生:2,200円
※障害者割引有り。詳細はお問い合わせください。
国立演芸場
(住所)〒102-8656 東京都千代田区隼町4-1
- 問合せ
- 《国立劇場チケットセンター》(午前10時~午後6時)
0570-07-9900,03-3230-3000[一部IP電話等] - 交通
- 地下鉄有楽町線・半蔵門線・南北線「永田町駅」4番出口から徒歩5分
地下鉄半蔵門線「半蔵門駅」1番出口から徒歩5分 - ホームページ
-
http://www.ntj.jac.go.jp/engei.html