2016年8月1日
“特別”なオペラ
新国立劇場制作部オペラ(広報担当) 高梨木綿子
劇場いっぱいに響き渡るオペラ歌手の声,大群衆を演じる合唱団,迫力いっぱいのオーケストラ,そして大がかりな舞台セットに華麗な衣装…。オペラといえば,現実とはかけ離れた豪華な世界というイメージの方が多いことでしょう。またヨーロッパの歴史ある歌劇場を訪れ,贅沢な空間を体験した経験のある方も多いことと思います。音楽と演劇,文学,美術,あらゆる芸術が一体となったオペラという芸術は,オペラでしか味わえない特別な感動をもたらすものです。
そんなオペラの名作の中でも,とりわけ“特別”といえる超大作が,ワーグナーの“ニーベルングの指環”です(オペラファンは“指環”と呼びます)。序章にあたる序夜『ラインの黄金』から第1日『ワルキューレ』,第2日『ジークフリート』,第3日『神々の黄昏』と,4つの作品で構成される四部作で,すべてを上演するには4日間,幕間の休憩を含めると20時間もかかる大作です。

“ニーベルングの指環”序夜『ラインの黄金』
2015年公演より(撮影:寺司正彦)
ただ単に長いだけでなく,ワーグナーはこの“指環”四部作で,権力欲や愛といった人間誰しも味わう感情をテーマに織り込んで,神々と人間の世界の終焉のドラマを,壮大な世界観で描きました。ワーグナーは,ドイツのバイロイトという街に,この四部作を上演するための理想の劇場“バイロイト祝祭劇場”まで作ってしまいました。現在でも,毎年夏に開催されるバイロイト音楽祭には,世界中の熱狂的な“ワグネリアン”(ワーグナー・ファン)が集まり,“指環”をはじめとするワーグナーの世界にどっぷりとつかる,まさに“特別”な時間を楽しんでいます。

“ニーベルングの指環”第1日『ワルキューレ』
フィンランド国立歌劇場公演より Photo:Karan Stuke
難しそうな“指環”ですが,4作品の中で最も人気があって,初心者でもわかりやすい作品が『ワルキューレ』です。誰でも聞いたことのある有名な「ワルキューレの騎行」の音楽もありますし,何と言っても男女の出会いと禁断の愛の物語ですから,始まればぐいぐいと引き込まれてしまいます。新国立劇場では去年から3年がかりで“指環”を上演していて,今年のシーズン・オープニングがこの『ワルキューレ』です。
芸術の秋,何か“特別”な芸術を体験してみたい,という方には最高のチャンスです。オペラファンでなくてもきっと,“指環”の大きな世界に圧倒されることでしょう。

『ラ・ボエーム』2012年公演より(撮影:三枝近志)
難しそうなものはちょっと…と尻込みしてしまう方も大丈夫。新国立劇場では様々な国のオペラを上演していて,『ワルキューレ』の後に上演する『ラ・ボエーム』では,プッチーニの甘く美しい音楽と,パリの街から飛び出したような豪華な舞台とともに,切ないラブストーリーを味わうことができます。愛情表現豊かな国イタリアが生んだオペラは,恋愛の喜びも悲しみもストレートに伝わってくるのが特徴です。日常であれば気恥ずかしいような愛の告白が,音楽と一体となって美しい見せ場になるのは,オペラならでは。思い切りロマンティックな時間を過ごしたい方には,『ラ・ボエーム』は特にお薦めです。
新国立劇場では,オペラを次々に上演しています。芸術の秋は,是非新国立劇場へ御来場ください。
新国立劇場
(住所)〒151-0071
東京都渋谷区本町1-1-1
- 問合せ
- 【ボックスオフィス】(10:00~18:00)03-5352-9999
- 交通
- 京王新線(都営新宿線乗入れ)新宿駅より1駅,初台駅中央口直結
- 公演日時
- 『ワルキューレ』
10月2日(日)14:00,10月5日(水)17:00,10月8日(土)14:00,10月12日(水)14:00,10月15日(土)14:00,10月18日(火)17:00
『ラ・ボエーム』
11月17日(木)19:00,20日(日)14:00,23日(水・祝)14:00,26日(土)14:00,30日(水)14:00
- 観覧料
- 『ワルキューレ』S席27,000円 A席21,600円 B席15,120円 C席8,640円 D席5,400円
『ラ・ボエーム』S席23,760円 A席19,440円 B席12,960円 C席7,560円 D席4,320円 - ホームページ
-
『ワルキューレ』
http://www.nntt.jac.go.jp/opera/walkure/
『ラ・ボエーム』
http://www.nntt.jac.go.jp/opera/performance/151224_007955.html