2016年10月17日
ピュリッツァー賞の“ドラマ部門”とは?
新国立劇場制作部演劇(広報担当) 藤沢 花
我が国でも報道写真で有名なアメリカのピュリッツァー賞に,実はドラマ(戯曲)部門があることを皆さん御存じでしょうか?
ピュリッツァー賞は,アメリカの新聞経営者でありジャーナリストでもあったジョセフ・ピュリッツァーの遺言をもとに1917年に創設されました。「報道」と「文学」という2つのカテゴリにそれぞれいくつかの部門が設定され,ドラマ部門もそのうちの一つとして創設当初から続いている由緒ある賞なのです。(ちなみに報道写真部門が設立されたのは1942年)
●日本でも数多く上演されている,ピュリッツァー賞受賞作品
ピュリッツァー賞ドラマ部門への作品の応募には,「アメリカ人作家による,アメリカの生活を描いた戯曲」であることが条件とされています。「そんなアメリカ一色の作品,他の国の人は共感できないんじゃないの?」と思うかもしれません。しかし同賞の受賞作品には,日本でも何度も上演されている人気作が数多くあるのです。例えば,ソーントン・ワイルダーによる『わが町』は1938年の同賞受賞作。48年受賞作のテネシー・ウィリアムズ作『欲望という名の電車』や,57年受賞作のユージン・オニール作『夜への長い旅路』など,日本でも各所で繰り返し上演され,長いあいだ愛されている作品がいくつもあります。(新国立劇場ではそれぞれ2011年,2000年,同じく2000年に上演されています)

2011年新国立劇場公演『わが町』より

2000年新国立劇場公演『欲望という名の電車』より

2000年新国立劇場公演『夜への長い旅路』より
「アメリカ人作家によるアメリカの戯曲」といっても,「アメリカらしさ」にとどまらず,より深いところにある人間の持つ普遍性や,「生きること」の本質を突く作品が多いことがわかります。
●2014年受賞作“The Flick”
さて,新国立劇場ではそんなピュリッツァー賞を2014年に受賞したばかりの作品『フリック(原題:The Flick)』を来る10月に日本初上演します。
舞台はマサチューセッツ州の寂れた映画館。描かれるのは,名門大学を休学してアルバイトにやってきた,映画オタクのナイーブな黒人青年エイヴリーと,貧困層の白人アルバイトで映写係になることを夢見るサム,うまく恋愛できないことに悩む紅一点の映写係のローズら,今のアメリカの若者たちならではの日常。
“flick”とは映画や映画館を指す俗語で,チカチカと明滅するという意味の“flicker”という語がもとになっています。“チカチカと明滅する”フィルム上映から,デジタル上映への移行という波に飲み込まれていく映画館と若者たちが「失ってしまうもの」,そして「見つけ出すもの」───。日本に暮らす私たちにも迫るものがあります。傑作戯曲の日本初演に御期待ください!劇場でお待ちしています。

『フリック』稽古場の様子@新国立劇場
“映画館の客席”が舞台なのです!

2016年新国立劇場公演『フリック』チラシ
新国立劇場演劇 10月公演『フリック』
(住所)〒151‐0071 東京都渋谷区本町1‐1-1
- お問合せ
- 【ボックスオフィス】(10:00~18:00)03-5352-9999
- 交通
- 京王新線(都営新宿線乗入)新宿駅より1駅,初台駅中央口直結
- 公演日時
- 10月13日(木)~30日(日)
公演時間は以下のリンクを御覧ください。
http://www.nntt.jac.go.jp/play/performance/151225_007977.html - 作
- アニー・ベイカー
- 翻訳
- 平川大作
- 演出
- マキノノゾミ
- 出演
- 木村 了,ソニン,村岡哲至,菅原永二
- 御観劇料
- A席6,480円 B席3,240円
- ホームページ
-
http://www.nntt.jac.go.jp/play/performance/151225_007977.html