2016年12月5日
約300年の歴史をつむぐ優雅な世界「組踊」
国立劇場おきなわ事業課 宮里道子
皆さんは「組踊」を知っていますか。「組踊」は,歌舞伎や能と同じく国の重要無形文化財,ユネスコの「人類の無形文化遺産の代表的な一覧表」に掲載されていますが,残念ながら国内外では認知度が高いとはいえません。
「組踊」は,2019年に誕生300年を迎えようとしています。かつて琉球王国として栄え,独自の歴史と文化を育んできた沖縄には今なお,数多くの伝統芸能が脈々と受け継がれています。その中でも,沖縄伝統芸能の精髄とも称される「組踊」は特別な存在です。
今回は,沖縄が世界に誇る伝統芸能「組踊」を皆さんに知っていただきたいと思い,「組踊」の魅力と「組踊」を最も堪能できる場所として「国立劇場おきなわ」を御紹介いたします。
「国立劇場おきなわ」は,2004年1月沖縄県浦添市に開場しました。琉球王国時代の家屋や祭祀建築(神あしゃぎ)をモチーフとした外観は圧倒的な存在感を放ち,建物を見るために訪れる方がいるほどです。また,張り出し舞台や花道,回り舞台などを兼ね備えた可動式舞台をもつ大劇場は,「組踊」を堪能できる最高の場所といわれており,1年を通じて「組踊」をはじめ様々な沖縄伝統芸能の公演を楽しむことができます。

国立劇場おきなわ外観
18世紀初頭の琉球王国時代,先人たちは海を渡り,アジア諸都市との交易を広げながら,世界にただ一つの「琉球芸能」を築いていきました。その中で,格調高い宮廷芸能として「組踊」が誕生しました。
「組踊」とは,せりふ・音楽・踊りで構成される沖縄独自の歌舞劇です。琉球王府から中国皇帝の使者「冊封使」を歓待するため,宴席の儀礼を取り仕切る「踊奉行」に任命された玉城朝薫が,琉球古来の故事をもとに,能や歌舞伎などの芸能を参考に創作したもので,1719年に「二童敵討」「執心鐘入」の2作品が初めて上演されました。上記2作品と「銘苅子」「女物狂」「孝行之巻」は,「朝薫の五番」と称され,現在でも名作として親しまれています。その後,多くの組踊作者が登場し,現在までに70余りの「組踊」が伝えられています。

朝薫の五番のひとつ 組踊「銘苅子」の一場面
立方の色鮮やかな紅型衣裳,沖縄古語による流れるようなセリフ回しや優雅な所作,地謡が奏でる琉球古典音楽の荘重な調べが誘う美しい舞台は,琉球文化を色濃く感じさせる組踊の特徴です。
また,舞台には大がかりなセットはなく,お客様の想像力と一体となって初めて物語が展開していきますので,字幕表示を見ながら物語の世界へ身を委ねるのも組踊を楽しむ醍醐味といえるでしょう。
1月には組踊の創始者・玉城朝薫の代表作で「朝薫の五番」のひとつ,「執心鐘入」が上演されます。美少年・中城若松に恋をし,その執念から鬼女に変じてしまった女が,法力によって鎮められるまでを描いた内容で,組踊の代名詞ともいわれる最高傑作です。この機会に是非御堪能ください。

朝薫の五番のひとつ 組踊「執心鐘入」の一場面
国立劇場おきなわ 1月公演 組踊「執心鐘入」
〒901-2122 沖縄県浦添市勢理客四丁目14番1号 国立劇場おきなわ 大劇場
- 問合せ
- 国立劇場おきなわチケットカウンター(午前10時~午後5時30分) Tel.098-871-3350
- 交通
- バス:国立劇場おきなわ(結の街)バス停下車 徒歩約1分
勢理客バス停下車 徒歩約10分
車:那覇空港から約20分,モノレールおもろまち駅下車後車で約10分 - 公演日時
- 平成29年1月28日(土) 14時開演
- 御観劇料
- 一般:3,100円 大学生等:2,000円 高校生以下:1,000円
- ホームページ
-
http://www.nt-okinawa.or.jp/