2017年2月3日
~国立劇場50周年記念 琉球芸能公演によせて~
琉球芸能の組踊「執心鐘入」
国立劇場制作部伝統芸能課 課長 猪又宏治
沖縄の芸能には,庶民の生活や信仰の中で生まれ育った「民俗芸能」と,琉球王国時代に宮中で行われていた芸能を発祥とする「琉球芸能」とがあります。この「琉球芸能」は洗練された音楽と舞踊を生み出し,その白眉が「組踊」です。組踊は,18世紀初頭,踊奉行の玉城朝薫によって中国皇帝の使者・冊封使をもてなすために創作されました。以後,首里城の中で磨き上げられ,独自の美しい様式をもった芸術に育ちます。廃藩置県以後は,町へ出た宮廷舞踊家が市井の劇場で組踊や舞踊を上演,踊りや歌劇なども創作し,舞踊が稽古事としても庶民に広がっていきました。
組踊は,沖縄の本土復帰前の昭和42年6月,琉球政府文化財保護委員会により,玉城朝薫作「二童敵討」「執心鐘入」「銘刈子」「女物狂」「孝行の巻」(朝薫五番)が重要無形文化財に,昭和47年5月の本土復帰と同日に国の重要無形文化財に指定され,平成16年1月に国立劇場おきなわ(沖縄県浦添市)が開場しました。組踊は平成22年11月にユネスコ「人類の無形文化遺産の代表的な一覧表」に記載され,世界からも注目をあびています。
組踊「執心鐘入」
東京の国立劇場は,沖縄の本土復帰前の昭和41年11月に開場し,翌年1月に琉球芸能の第1回公演を上演して以来,今日まで琉球芸能公演を継続して行っています。今年は開場50周年記念ならではの公演を企画し,組踊「執心鐘入」を中心に琉球舞踊を御堪能いただきます。
「執心鐘入」は,朝薫五番の中でも屈指の人気曲で,朝薫が王府の命を受けて江戸に上り,能「道成寺」を取材し,組踊独特の世界を作りました。宿の乙女の一途な思いが執心となり,若き修験者である恋しい男を追い,蛇体となって紀州・道成寺まで追いかけて,寺の鐘に隠れた男ともども執心の炎で灰塵と化すという悲しい話の『道成寺縁起』がありますが,能「道成寺」はその後日談で,女の執心が化身となり,白拍子姿で再興となった道成寺の鐘供養に現れ,ついには蛇体となって執心を表現する内容となっています。
組踊「執心鐘入」は,首里へ奉公に向かうエリートの若者・中城若松と,一宿を貸した宿の女の物語で,女は容姿端麗の若松に思いを寄せますが,拒絶されてしまいます。当時,女性から思いをぶつけるのは一大決心でしたが,それを拒否された女は若松を追いかけます。首里の末吉寺に逃げ込み鐘の中に隠れた若松,寺の中を探すうちに鬼と化した女を祈り伏せる寺の座主との緊迫した場面など,見所が満載で,人の心の奥深い有様を描く名曲です。当日は,琉球舞踊の名手,名曲とともにお楽しみください。
国立劇場開場50周年記念 3月琉球芸能公演 『組踊 執心鐘入と琉球舞踊』
〒102-8656 東京都千代田区隼町4-1
- お問合せ
- 国立劇場チケットセンター(午前10時~午後6時)
0570-07-9900,03-3230-3000[PHS・IP電話]
- 交通
- 東京メトロ半蔵門線・半蔵門駅より徒歩5分
有楽町線・半蔵門線・南北線永田町駅より徒歩8分
都営バス都03(晴海埠頭-四谷駅)三宅坂下車 徒歩1分
- 公演日時
- 平成29年3月4日(土)午後2時開演
平成29年3月5日(日)午後2時開演
- 観劇料金
- 一般5,000円/ 学生3,500円 (全席指定)
※障害者の方は割引あり
- ホームページ
-
3月琉球芸能公演 『組踊 執心鐘入と琉球舞踊』
http://www.ntj.jac.go.jp/schedule/kokuritsu_s/2016/31055.html
国立劇場開場50周年記念サイト
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