2018年3月29日
能・狂言,いつの世も変わらない人間の姿
国立能楽堂 企画制作課 佐藤恵一
みなさんの中には,能や狂言を観てみたいけど,難しそう,言葉がわからない,などと思っている方はいませんか。そんな方にお勧めなのが,毎年6月に国立能楽堂で開催されている能楽鑑賞教室です。初心者にもわかりやすい内容の狂言と能を,能楽師による解説を付けて上演する公演です。さらに,国立能楽堂には各座席に字幕システムが設置されていて,語られる言葉や状況の説明がリアルタイムで表示されるので,物語の進行から取り残される心配もありません。
回上演される狂言は「清水」。主人にお茶のための水を清水に汲みに行くように言われた家来の太郎冠者。面倒だからと,清水に鬼が出たと嘘をつき逃げ帰ってきます。すると,主人は自ら清水に行くと言い出します。嘘が露見しては大変と,太郎冠者は先回りして鬼になりすましますが・・・。
嘘がばれそうになり,更に嘘を重ねる太郎冠者。これって私のこと?太郎冠者みたいな人が私のとなりにもいる!いつの世も変わらない人間の姿を描いているものとして観るのも,狂言の楽しみの一つでしょう。
そして能は『源氏物語』を題材とした人気作「葵上」。光源氏の正妻・葵上は病に臥せっています。巫女に占わせると,病の原因は,源氏に思いを寄せる六条御息所が嫉妬のあまり生霊となり,葵上を苦しめているのでした。悪霊退散のため,比叡山から横川の小聖が呼ばれ祈祷を始めると,御息所の生霊が鬼の姿で現れます。小聖との激しい攻防の末,生霊は祈り伏せられ成仏します。
われ知らず生霊となり,鬼となるほど嫉妬の情念を燃やす女性。いまでもドラマの題材になりそうな話ですね。千年の時を経ても読み継がれている『源氏物語』,そしてそれを題材とし現代まで上演を重ねる能「葵上」。能や狂言は決して古くさい物語ではありません。現代にも通じる,人間の今も昔も変わらない姿を描いているものなのです。“食わず嫌い”をしているみなさんも,是非この機会に国立能楽堂に来て,その世界に足を踏み入れてみてください。
国立能楽堂 能楽鑑賞教室
(住所)〒151-0051 渋谷区千駄ヶ谷4-18-1
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- 6月18日(月)~22日(金)午前11時・午後2時開演
解説・能楽の楽しみ/狂言「清水」/能「葵上」 - 御観劇料金
- 一般 正面3,100円/脇正面2,600円/中正面2,100円
学生 全席1,300円 - ホームページ
-
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