2018年7月26日
沖縄芝居への誘い
国立劇場おきなわ事業課 池田智子
沖縄芝居は,沖縄の方言による大衆演劇で,戦前・戦後の娯楽の少ない時代,沖縄の人々から圧倒的な人気を集めました。沖縄芝居の舞台には,今は少なくなった,沖縄の風情や文化があふれています。今回は,沖縄芝居の魅力を御紹介いたします。
沖縄芝居のはじまり
明治12(1879)年の廃藩置県(琉球処分)によって,琉球王府で組踊などの御冠船芸能(※)の担い手であった士族たちが職を失い,生計を立てるために,首里から那覇の町に住まいを移し,粗末な芝居小屋で料金をとって宮廷芸能を上演するようになりました。明治20(1887)年頃になると,本格的な芝居小屋が建てられ,従来の宮廷芸能では飽き足らなくなっていた観客や時代のニーズを受けて,新たなスタイルの演劇が生み出されました。これが沖縄芝居のはじまりです。
※御冠船芸能 : 琉球国王の代替わりの際に来訪する中国皇帝の詔勅を携えた使者を冊封使と呼び,冊封使は王への冠を携えて来たことから,彼らの乗った船を「冠船」と呼びました。一行を歓待する宴で演じられた芸能を「御冠船芸能」と呼びます。
沖縄芝居の種類
沖縄芝居は「歌劇」と「方言せりふ劇」に分けられます。歌劇は歌,台詞,演技,舞踊などで構成された歌舞劇です。初期の歌劇は,上演時間が数分から10分程度の短編作品が多く,本格的な歌劇の登場は明治40年代以降です。作品の内容は,庶民の日常生活を描いたものや恋愛ものが多く,悲恋物語が人気を呼びました。

三大悲歌劇のひとつ「泊阿嘉(とぅまいあーかー)」より
方言せりふ劇は,首里や那覇などで日常的に使われた方言に近い台詞で演じられます。廃藩置県後,沖縄の役者が本土から持ち込んだ歌舞伎や演劇を翻案し,それを沖縄古来の演劇に組み合わせたのが方言せりふ劇で,その多くは,史実を題材にした史劇,故事や伝説をもとにした時代劇です。

代表的な史劇 「首里城明け渡し」より
現代の沖縄芝居
昭和47(1972)年の復帰後は,人々の娯楽が沖縄芝居から映画やテレビ等へと多様化し,また,方言を理解する世代も減少しました。こうした時代の流れから沖縄芝居の上演回数は少なくなってきましたが,今でも「母の日」に恒例行事として昔ながらの人気作品が盛んに上演されたり,現代人の感覚に合わせた新作品の上演も増えつつあります。
国立劇場おきなわでは,往年の沖縄芝居ファンの要望に応えた名作をはじめ,今では上演される機会の少ない作品や,現代にふさわしい演出による再演,新作芝居等の上演を重ねています。9月には,沖縄芝居を初めて鑑賞する方にも親しみを感じていただけるよう,沖縄芝居鑑賞教室を上演します。第一部では,舞踊や短編歌劇の上演に加え,沖縄芝居の歴史や鑑賞のポイントを御紹介します。第二部は,県内の伝説をもとに創られた沖縄芝居「怪猫伝 化け猫~山田祝女殿内~」をお届けします。この機会に沖縄芝居の魅力をどうぞ御堪能ください。

平成29年度沖縄芝居鑑賞教室 時代舞踊歌劇「菖蒲(しょうぶ)の由来記」より
国立劇場おきなわ 9月公演 沖縄芝居鑑賞教室
(住所)〒901-2122 沖縄県浦添市勢理客4丁目14番1号
国立劇場おきなわ 大劇場
- お問合せ
- 国立劇場おきなわチケットカウンター(10時~17時30分)
Tel:098-871-3350 - 交通
-
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- 国立劇場おきなわ(結の街)バス停下車 徒歩約1分
勢理客バス停下車 徒歩約10分 - 車:
- 那覇空港から約20分,モノレールおもろまち駅下車後車で約10分
- 公演日時
- 平成30年9月13日(木)~15日(土) 14時開演
- 御観劇料
- 一般:2,100円 団体:1,600円 高校生以下:1,000円
- ホームページ
-
http://www.nt-okinawa.or.jp/