2018年8月24日
芸術の秋に歴史ドラマの名作を
-平清盛生誕900年と『平家女護島』-
国立劇場制作部歌舞伎課 横山 陽一
平安末期の武将平清盛。歴史の授業やテレビドラマ等で,その名を耳にしたことがあるかと思います。清盛が生まれたのは元永元年(1118年)。今年は清盛の生誕から900年に当たります。所縁のある宮島(広島県)や神戸(兵庫県)等では,生誕900年にちなむイベントが開催されていますが,東京・半蔵門の国立劇場では,10月歌舞伎公演で,清盛が物語の重要な背景となる人物として登場する『平家女護島』を上演します。

平相国入道清盛(中村芝翫)
この作品は『平家物語』を題材にした全五段の時代物(武士や公家の社会を題材にした作品)で,享保4年(1719年)に人形浄瑠璃で初演され,翌年には歌舞伎でも上演されるようになりました。作者は日本のシェイクスピアともいわれる近松門左衛門です。平家一門の全盛期を舞台に,清盛の悪逆非道ぶりと,その犠牲になった人々の苦悩を描いています。歌舞伎では,清盛に背いて流罪となった主人公・俊寛僧都の悲劇を描いた名場面
「鬼界ヶ島」(本公演の二幕目で上演)を単独で上演することが多いですが,今回は清盛にも焦点を当て,清盛の存在によって,俊寛の悲劇や清盛にあらがう女性たちの苦悩が一層浮き彫りになる場面構成で御覧いただきます。

俊寛僧都(中村芝翫)
<あらすじ>権勢を誇る平清盛は,平家打倒の計画に参加した俊寛僧都・丹波少将成経・平判官康頼を鬼界ヶ島への流罪に処しました。清盛館に連行された俊寛の妻・東屋は,清盛に側仕えを強要されますが,能登守教経の勧めもあり,自害して操を守ります。
俊寛・成経・康頼が鬼界ヶ島に流されて3年後,赦免船が到着しますが,上使の瀬尾太郎兼康が読み上げる赦免状に,清盛の深い憎しみを受ける俊寛の名前はありません。嘆き悲しむ俊寛に,もう一人の上使・丹左衛門尉基康は,俊寛赦免の趣意を記した教経の書状を読み上げます。俊寛・成経・康頼は,成経と結婚した海女の千鳥を連れて船に乗ろうとしますが,瀬尾は千鳥の乗船を認めません。東屋の死を瀬尾から聞いて絶望した俊寛は,自分の代わりに千鳥を乗せるよう頼むうち,口論の末,瀬尾を殺害します。島に残ることを決意した俊寛は,遠ざかる船をいつまでも見送ります。
成経・康頼・千鳥を乗せた赦免船が敷名の浦に到着しますが,清盛と後白河法皇の御座船(貴人の乗る船)の通行を聞いた丹左衛門は,千鳥への非難を避けるため,俊寛の郎等・有王丸に千鳥を預けます。清盛は,厳島神社の参詣を装い,平家打倒の計画の首謀者である法皇を殺害しようと入水させます。千鳥は法皇を救出しますが,清盛に殺されてしまいます。やがて,非道の清盛を恨む東屋と千鳥の亡霊が出現し,清盛を苦しめるのでした。
国立劇場には襲名後初出演の中村芝翫が俊寛と清盛の二役に挑むほか,中村東蔵の後白河法皇,片岡孝太郎の東屋をはじめとする主に中堅若手の俳優陣で,充実の舞台をお送りします。芸術の秋に,国立劇場に是非御来場いただき,歴史ドラマの名作をお楽しみください。
国立劇場 10月歌舞伎公演
『通し狂言 平家女護島』
(住所)〒102-8656 東京都千代田区隼町4-1
- お問合せ
- 《国立劇場チケットセンター》(午前10時~午後6時)
0570-07-9900,03-3230-3000[一部IP電話等] - 交通
- 東京メトロ半蔵門線・半蔵門駅より徒歩5分,半蔵門線・有楽町線・南北線永田町駅より徒歩8分
都営バス都03(晴海埠頭-四谷駅)三宅坂下車徒歩1分 - 公演日時
- 平成30年10月1日(月)~25日(木)12時開演
※但し,12日(金)・19日(金)は午後5時開演 - 御観劇料
- 特別席11,000円(学生7,700円),1等A席9,800円(学生6,900円),1等B席6,400円(学生4,500円), 2等A席4,900円(学生3,400円),2等B席2,700円(学生1,900円),3等席1,800円(学生1,300円)
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