2018年11月22日
身代わりをめぐる物語
~12月文楽鑑賞教室『菅原伝授手習鑑』~
国立劇場制作部伝統芸能課 佐々木勇仁
国立劇場小劇場では12月に文楽鑑賞教室を開催します。文楽を構成する太夫,三味線,人形,それぞれの役割や作品を楽しむポイントを,出演者が実演を交えながらわかりやすく説明する,解説が付きます。

公演の後半では『菅原伝授手習鑑』「寺入りの段」「寺子屋の段」を上演します。この作品は文楽や歌舞伎の三大名作の一つに数えられ,江戸時代から現在まで多くの人を魅了し続けてきました。菅原道真(作中では菅丞相と呼ばれます)に関する史実や伝説に,菅丞相に関わりのある人々の悲劇を織り交ぜて脚色されています。今回上演する場面に菅丞相自身は登場しませんが,菅丞相に深いゆかりのある人々が登場し,それぞれの生き様を描いていきます。今回上演する部分のストーリーを少し紹介しましょう。
菅丞相の失脚後,元家臣で寺子屋の師匠武部源蔵とその妻戸浪は,自分の寺子屋に菅丞相の若君菅秀才をかくまっていました。ある日,源蔵が思いつめた様子で帰ってきます。菅丞相を陥れた勢力に目を付けられ,菅秀才を殺害するように迫られたのです。源蔵は,菅秀才の命を助けるために,今日入門したばかりの小太郎を身代わりにすることを思い付きます。小太郎は菅秀才のように品がありましたが,それでも身代わりであることが発覚するリスクもあります。源蔵は思い悩み,ついに覚悟を決めます。
そこに松王丸がやってきます。松王丸は敵対する勢力の一味で,菅秀才の顔を知っています。本当に源蔵が菅秀才を手にかけるのか確認のために来たのでした。源蔵は奥の部屋で小太郎の首を討ち,松王丸に差し出します。
源蔵と戸浪は身をこわ張らせて松王丸の様子をうかがいます。松王丸は顔を確認し,この首は菅秀才に間違いないと断言し,その場を立ち去るのでした。

『菅原伝授手習鑑』「寺子屋の段」
(国立劇場 平成29年5月公演より)
菅秀才の顔を知っているはずの松王丸はなぜ,小太郎の首を菅秀才のものだと言ったのでしょうか。その詳細は「寺子屋の段」の後半で徐々に明かされていきます。
12月文楽鑑賞教室は,この『菅原伝授手習鑑』と解説「文楽の魅力」,行商人の夫婦が歌と踊りを披露する『団子売』を取り上げます(※)。
また,多くの方に鑑賞していただけるように,午後7時開演の「社会人のための文楽鑑賞教室」や英語で解説する「Discover BUNRAKU-外国人のための文楽鑑賞教室―」(※)を開催する日もあります。国立劇場の文楽鑑賞教室にどうぞお越しください。
※「Discover BUNRAKU-外国人のための文楽鑑賞教室-」では『団子売』の上演はありません。
国立劇場 12月文楽鑑賞教室
(住所)〒102-8656 東京都千代田区隼町4-1
- お問合せ
- 【国立劇場チケットセンター】(午前10時~午後6時)
0570-07-9900,03-3230-3000[一部IP電話等] - 交通
- 東京メトロ半蔵門線・半蔵門駅より徒歩5分,有楽町線・半蔵門線・南北線永田町駅より徒歩8分
都営バス都03(晴海埠頭-四谷駅)三宅坂下車徒歩1分
宿75(新宿駅西口-河田町-四谷駅前―三宅坂)三宅坂下車徒歩1分 - 公演日時
- 文楽鑑賞教室
平成30年12月6日(木)~18日(火)午前11時開演/午後2時開演
※7日(金)・9日(日)・10日(月)・14日(金)・16日(日)・17日(月)は午前11時の部のみ
社会人のための文楽鑑賞教室
平成30年12月7日(金)・10日(月)・14日(金)午後7時開演
Discover BUNRAKU-外国人のための文楽鑑賞教室-
平成30年12月17日(月)午後7時開演
※解説「文楽の魅力」と『菅原伝授手習鑑』を上演します。『団子売』の上演はありません。 - 御観劇料
- 一般4,000円 / 学生1,500円(全席指定)
- ホームページ
- https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/kokuritsu_s/2018/12106.html
【インターネット予約】
http://ticket.ntj.jac.go.jp(パソコン)
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