2018年12月20日
新作オペラの誕生
新国立劇場制作部オペラ(広報担当) 高梨木綿子
“オペラ”というとどんな作品を思い浮かべますか?「カルメン」,「魔笛」,「椿姫」…主に100年前,あるいは200年前に作曲され,時代を超えて上演され続けているオペラを私たちは楽しんでいます。そうした作品は今では名作として知られていますが,作曲された当時は現代作品であり,新しいオペラでした。「18○○年の初演の際は拍手が何時間も続いた」「何か月間に何10回も上演された」という作品もあれば,「初演は酷評され,上演は打ち切られた」と歴史に残っている作品もあります。いずれにしても,古くは宮廷からの依頼により,近代では劇場などからの委嘱を受けて作曲家がオペラを作曲し,初演された後,社会の評価の中で人気を博した作品が今日の名作となっているのです。

新国立劇場「カルメン」2017年公演より
さて,新国立劇場では名作オペラも上演していますが,今シーズンは新作オペラを上演します。タイトルは「紫苑物語」。太宰治や坂口安吾とともに “無頼派”として知られる作家・石川淳の代表作のひとつを題材に,作曲家の西村朗氏にオペラ化を依頼しました。石川淳の小説の世界は,詩人の佐々木幹郎氏の手によりオペラ台本へ変貌。「紫苑物語」のストーリーの骨格とエッセンスを抽出し,オペラにふさわしいダイナミックな展開で構成された台本へ,西村氏が作曲しています。オペラといえば台詞に当たる歌詞を歌うソリストの歌,合唱,そしてオーケストラの音楽と,音楽面だけでも複雑で長大な大作ですが,的確な台本を得て,作曲中の西村氏の頭の中では,「紫苑物語」の音楽が鳴り響いているとか。
オペラを舞台で上演する際は,演出をどう展開し,大きな舞台上に何を創り出すのか,視覚効果も大掛かりです。台本と,作曲されたばかりの音楽を手掛かりに,演出家の笈田ヨシ氏と,世界一流の装置デザイナーや衣裳デザイナーが,「紫苑物語」はどんなオペラになるのか話し合いながら,それぞれの準備を進めています。今年の7月には,デザイナーが劇場に集まって,演出プランのプレゼンテーションが行われました。11月現在で,装置のプランはほぼ固まり,衣裳は実際に着用する本番用の衣裳が,順次縫製され,完成してきています。

「紫苑物語」トム・シェンク氏によるセットプランより
年が明ければすぐに,出演者が一堂に会してのリハーサルが始まります。その前に歌手たちは,新曲を読みこなし,歌いこなせるようになっていなければなりません。準備はまさに急ピッチです。

リチャード・ハドソン氏による衣裳デザイン画(うつろ姫)

リチャード・ハドソン氏による衣裳デザイン画(宗頼)
リハーサルが始まると,稽古場でのリハーサル,音楽稽古,オーケストラの練習,更に舞台の装置や照明の準備,舞台稽古と進みます。それぞれ分業で準備されてきた「紫苑物語」の全貌が明らかになるのは,世界初演となる公演初日,2019年2月17日です。このオペラはどんな作品として後世に残るのでしょうか。世界中で上演されるようになるのでしょうか。初演に立ち会う客席は,特別な期待感と緊張感に包まれることでしょう。

(左より)作曲家の西村朗氏,新作を委嘱した大野和士・新国立劇場オペラ芸術監督
新国立劇場 2018/2019シーズンオペラ
「紫苑物語」(創作委嘱作品・世界初演)
文化庁委託事業「平成30年度戦略的芸術文化創造推進事業」
(住所)〒151-0071 東京都渋谷区本町1-1-1
- お問合せ
- 03-5352-9999(新国立劇場ボックスオフィス/10:00~18:00)
- 交通
- 京王新線(都営新宿線乗入)初台駅徒歩1分
- 公演日時
- 2019年2月17日(日)14:00,20日(水)19:00,23日(土)14:00,24日(日)14:00
- 御観劇料
- S席16,200円 A席12,960円 B席8,640円 C席6,480円 D席3,240円
※学生割引(5%),ジュニア割引(20%),高齢者割引(5%),当日学生割引(50%),障害者割引(20%)など各種割引あり。
Z席1,620円は公演当日朝10:00から販売。御購入の際は下記ホームページで購入方法を御確認ください。 - ホームページ
- https://www.nntt.jac.go.jp/opera/asters/