2019年2月4日
爆笑と,哀感…「鹿芝居」の魅力
国立演芸場営業課 吉矢正之
普段は座布団の上で,扇子と手拭いだけを手に,様々なドラマを構築する落語家,そんな落語家たちが歌舞伎俳優よろしく,鬘や衣裳を身にまとい,そして化粧も施し,老若男女に扮して舞台に立つ。「鹿芝居」(“はなしか(噺家=落語家)”が演じる芝居)とは,そんな楽しさいっぱいの趣向に満ちています。

鹿芝居「世渡親子柵」(昨年の舞台より)
しばしば歌舞伎を真似て戯化した余芸,いわば際物芸のようにも受け取られがちですが,そもそも人物を描くこと,“江戸の粋”を追求することにかけては歌舞伎も落語も同じ目的を持った芸同士。鹿芝居の舞台には,落語家ならではの市井に生きる人間の息遣い,江戸の生活の薫りがにじみ出て,独特の哀歓を湛えています。もちろん,普段の高座からは窺えない,落語家たちの魅力,芸達者ぶりが垣間見えるのも楽しみの一つ。客席はほろりと泣かされるかと思えば,爆笑の連続で賑わいます。こうした舞台を経て,落語家たちも役者として立った経験を生かして,本来の落語の芸の向上に繋げるのです。
“鹿芝居”の舞台に掛けられる演目としては,「子は鎹」,「品川心中」,「井戸の茶碗」といった落語の代表作を舞台化したもの,その中には「芝浜革財布」,「人情噺文七元結」のように今ではすっかり歌舞伎世話物のレパートリーとしてもおなじみになった人情噺の大作もあります。これらはいわば“芸の逆輸入”として鑑賞を楽しむことができます。その一方,「源氏店」や「三人吉三」のような歌舞伎の名作にも落語家たちはしばしば挑戦しています。よく知られた歌舞伎の登場人物のイメージに落語家たちがどう寄り添うか,またどんなギャップが生じるか,観る方も演じる方も楽しみであり,スリル感のあるところです。
国立演芸場では2月中席(11日~20日)に鹿芝居『嘘か誠 恋の辻占~「辰巳の辻占」より』を上演予定です。この他,落語はもちろん,獅子舞,落語家同士による漫才など,お楽しみの演目が目白押しです。是非早春の国立演芸場にお越しください。
国立演芸場
(住所)〒102-8656 東京都千代田区隼町4-1
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- 2月中席 2月11日(月・祝)~20日(水)午後1時開演 ※15日(金)は午後1時/午後6時開演
- 観覧料
- 一般2,100円,学生1,500円,65歳以上1,300円,小学生1,100円(全席指定)
- ホームページ
-
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