2019年10月28日
京舞井上流の真髄を味わう
-11月舞踊公演《京舞》-
国立劇場制作部伝統芸能課 原田亮一
京都・祇園の座敷舞で知られる京舞井上流は,主に女性を担い手として繊細な技法により優美に舞われてきた一方,能や人形浄瑠璃などの動きも取り入れた躍動的な舞でも知られ,独自の美の世界を築いてきました。
国立劇場では昭和49年以来,4回にわたり四世家元・井上八千代を中心に大勢の祇園甲部の芸妓,舞妓が出演する《京舞》公演を行ってきました。11月舞踊公演は実に21年ぶり,5回目の《京舞》となります。

【京舞井上流とは】
200年以上の歴史をもつ井上流ですが,「井上八千代」の名は,初世が仕えていた近衛家を辞する際に「玉椿の八千代まで汝の真情は忘れぬぞ」といった言葉を掛けられたことに由来すると言われています。そして初代の姪であった二代目,明治期に活躍した三代目,20世紀を代表する名人の四代目と受け継がれ,現在の五代目に至っています。舞台活動のほか祇園甲部の芸妓,舞妓への指導や,また,毎年4月に開催される「都をどり」,秋の「温習会」の指導・振付,各種行事なども含めて祇園の,そして京都の文化を代表する存在とも言えます。
【みどころ】
当代家元が東京では初めて上演する「三つ面椀久」(29日(金)午後3時,30日(土)午前11時)は,遊女・松山に深く馴染み,座敷牢に閉じ込められた後に発狂したと伝えられる,実在した大坂の豪商・椀久(椀屋久兵衛/久右衛門)の姿を描く「椀久物」の一つです。松山を慕ってさまよい歩いてくる花道の登場,面を使っての田舎大尽・傾城・幇間の三役の舞い分けや,全編に漂う上方の風情をお楽しみいただきます。また,「虫の音」(30日(土)午後3時)は謡曲「松虫」に拠り,秋の情景によせて亡き友を忍ぶという内容で,地唄舞らしい詩情に満ちています。先代,当代と二代にわたる名演でも知られ,井上流を代表する作品の一つとなっています。

五世 井上八千代「虫の音」
井上流ならではの演目としては,「芦刈」「松羽衣」「梓」(いずれも29日(金)午後3時),「弓流し物語」(30日(土)午前11時)などがありますが,中でも「信乃」(30日(土)午後3時)は『南総里見八犬伝』に登場する八犬士の一人,犬塚信乃の姿を描く起伏に富んだ作品です。『八犬伝』で娘として育てられていたというエピソードにちなみ,前半はあどけない娘の姿で草を刈り,後半は一転して若武者となって城攻めの様子を物語るという構成です。
また,「手打」(29日(金)午後3時,30日(土)午後3時)は,京都の歌舞伎の顔見世において,太夫元や座頭,役者などが乗り込んできた際に贔屓筋や馴染みのお客が行った手打に由来すると言われているもので,大勢の芸妓が拍子木を打ち,褒め言葉を囃しながら花道から登場し,舞台では唄,三味線,囃子が演奏するという,京舞ならではの舞台です。
当代家元となってから初の開催となる《京舞》。満を持して展開される華やかで洗練された舞台を通じて,京舞の真髄を心ゆくまでご堪能ください。
国立劇場 11月舞踊公演 『京舞』
(住所)〒102-8656 東京都千代田区隼町4-1
- お問合せ
- 【国立劇場チケットセンター】(午前10時~午後6時)
0570-07-9900,03-3230-3000[一部IP電話等] - 交通
-
東京メトロ半蔵門線・半蔵門駅より徒歩5分
有楽町線・半蔵門線・南北線永田町駅より徒歩8分都営バス 都03(晴海埠頭-四谷駅)三宅坂下車 徒歩1分
宿75(新宿駅西口-河田町-四谷駅前―三宅坂)三宅坂下車 徒歩1分 - 公演日時
- 2019年11月29日(金) 午後3時開演
2019年11月30日(土) 午前11時開演
2019年11月30日(土) 午後3時開演 - 観劇料
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一般:1等A席9,200円,1等B席6,100円,2等席3,900円,3等席2,500円
学生:1等A席6,400円,1等B席4,300円,2等席2,700円,3等席1,800円 - ホームページ
-
https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/kokuritsu_l/2019/11164.html?lan=j
【インターネット予約】
https://ticket.ntj.jac.go.jp/(パソコン・スマートフォン共通)