2020年1月17日
※新型コロナウイルス感染症予防対策により一部公演中止となります。
詳細はHPを御覧ください。
近代絵画と能
-双方から紐解く美の世界-
国立能楽堂企画制作課 佐藤恵一
近代を代表する画家たちの作品には,能の演目や,能と題材を同じくする古典文学や伝説に着想を得て描かれた名作が数多くあります。国立能楽堂では平成28年から毎年2月に「月間特集・近代絵画と能」と題し,それらの絵画のイメージを補助線として能の魅力を楽しんでいただく公演を上演しています。5回目となる今回は,「草薙」(絵画=安田靫彦『草薙の剣』),「楊貴妃」(絵画=上村松園『楊貴妃』),「井筒」(絵画=横山大観『井筒』),「忠度」(絵画=伝 小堀鞆音『薩摩守平忠度桜下詠歌之図』),「室君」(絵画=松岡映丘『室君』)の5つの作品を取り上げます。
この「近代絵画と能」シリーズと切っても切れない画家として上村松園(1875~1949)がいます。松園は謡を趣味としていたことも知られていますが,松園が描いた絵画にはとりわけ能にゆかりの深いものが多数あり,平成28年のシリーズ開始以来毎年その作品が取り上げられています。美人画の名手として評価の高い松園ですが,表面的な美しさだけでなく内面から醸し出されるような美しさを追い求めたその作風には,喜怒哀楽を直接的に表現せず,余計な物をそぎ落とし,限られた動きの中で人間の心情を描き出す能と通じるものがあります。代表作である『序の舞』(重要文化財)は,息子・松篁の妻が〈序の舞(能の舞の中でも最も品位が高い舞)〉を舞う姿を描いたものであり,松園自身「理想の女性の最高のもの」と語っています。また,『草紙洗小町』は,同名の能の中で小野小町が歌の書かれた草子(本)を水で洗い流す場面が描かれ,小町は能面そのものを思わせる表情をしています。
本年取り上げる松園の絵画は『楊貴妃』。能の「楊貴妃」では楊貴妃が玄宗皇帝との愛おしい日々を懐旧し舞を舞いますが,松園の『楊貴妃』ではその華やかなりし昔,湯浴みを終えた楊貴妃がなまめかしくも凜とした姿で描かれています。
上村松園『楊貴妃』 大正11年(1922) 松伯美術館所蔵
「楊貴妃」が上演される8日の普及公演では国文学研究資料館名誉教授の小林健二氏が松園と能の関わりについてより深く解説します。絵画には興味があるにもかかわらず能を見る機会になかなか恵まれなかった方はもちろん,絵画も能も初心者という方にも双方の美の世界を味わっていただけるこの機会に是非国立能楽堂に足をお運びください。
国立能楽堂 2月公演 月間特集・近代絵画と能
(住所)〒151-0051 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-18-1
- お問合せ
- 《国立劇場チケットセンター》(午前10時~午後6時)
0570-07-9900,03-3230-3000 [PHS・IP電話] - 交通
-
JR(総武線)千駄ヶ谷駅下車・徒歩5分
都営地下鉄(大江戸線)国立競技場駅下車A4出口・徒歩5分
東京メトロ(副都心線)北参道駅下車出口1又は2・徒歩7分
- 公演日時と演目
- ・定例公演 令和2年2月5日(水)午後1時開演
狂言「鶯」/能「草薙」
・普及公演 令和2年2月8日(土)午後1時開演
解説・能楽あんない/狂言「二人袴」/能「楊貴妃 干之掛」
・定例公演 令和2年2月13日(木)午後6時30分開演
狂言「蟹山伏」/能「井筒」
・特別公演 令和2年2月29日(土)午後1時開演
能「忠度」/狂言「孫聟」/能「室君」 - 観劇料
- 定例公演・普及公演
一般:正面5,000円/脇正面3,300円/中正面2,800円
学生:脇正面2,300円/中正面2,000円
特別公演
一般:正面7,800円/脇正面6,300円/中正面4,700円
学生:脇正面4,400円/中正面3,300円 - ホームページ
-
https://www.ntj.jac.go.jp/【インターネット予約】
https://ticket.ntj.jac.go.jp/(パソコン・スマートフォン共通)