2020年11月13日
座敷舞の美を楽しむ
11月舞踊公演〈舞の会-京阪の座敷舞-〉
国立劇場制作部伝統芸能課 原田亮一
京都や大阪の花街を中心に,独自の美をつくり上げてきた「座敷舞」。座敷という空間で洗練を重ねてきた舞は,人の心の微細な動きや,四季の情景を繊細巧緻な技法で描きます。
その座敷舞を50年以上にわたり特集してきた公演が,〈舞の会-京阪の座敷舞-〉です。京阪の四流(井上・楳茂都・山村・吉村)を中心として舞の名手が一堂に会し,その魅力を御堪能いただきます。

「舞の会-京阪の座敷舞-」
12時開演の部に登場する山村流宗家の山村友五郎は,同名の能に基づく『善知鳥』を上演します。『善知鳥』は,鳥の殺生をしていた猟師が,死後に化鳥に苦しめられるという業を題材とした作品です。子を捕らえられた親鳥の慟哭をこまやかに描く一方,猟師が鳥を打ち落とす様子や鳥に激しく責め立てられる場面が,ダイナミックに舞われるのが特徴です。今回は,2年前の自身のリサイタルで新たに振りを付けた山村友五郎が,一層練り上げた舞台を御覧に入れます。

山村友五郎
2時30分開演の部では,東京の地唄舞として存在感を増す神崎えんが,父・神崎秀珠が振り付けた『影法師』を舞います。時雨降る夜,思うようにならない恋へのつらさを話していた相手は自分の影だった…という趣向が光ります。しっとりとした詩情に満ちたひとときに御期待ください。京舞井上流五世家元の井上八千代は本行物(能を元とする作品)の名作『鉄輪』を,〈舞の会〉では10年ぶりに手掛けます。夫に捨てられ,鬼となった妻が復讐しようとしますが,最後は陰陽師の力で退散する,というものです。井上流ならではの躍動的な振りも交え,妻の嘆きや恨みが凄烈に刻まれていきます。

神崎えん

井上八千代
5時開演の部の『ぐち』は艶やかな情感に溢れた名作で,想う相手に会えた嬉しさや,逢瀬が終わってしまう辛さがうたわれています。楳茂都流の重鎮,楳茂都梅咲弥による円熟の舞でお楽しみいただきます。そして本公演を締めくくるのは,吉村流を率いる宗家の吉村輝章と家元の吉村輝之による『三国一』です。白拍子(平安末期から鎌倉時代に流行した歌舞をする遊女)を見初めた大尽とその妻の愛憎が,おおらかさやウィットに富み,かつ演劇的な味わいも感じられる風情の中に浮かび上がります。

楳茂都梅咲弥

(左より)吉村輝章,吉村輝之
座敷風の舞台とそこにゆらめく和蝋燭の灯や,京阪固有の三味線音楽である地唄・上方唄のまろやかな響きとともに広がる余情に満ちた舞の世界を,心ゆくまでお楽しみください。
国立劇場 11月舞踊公演 『舞の会―京阪の座敷舞―』
(住所)〒102-8656 東京都千代田区隼町4-1
- お問合せ
- 《国立劇場チケットセンター》(午前10時~午後6時)
0570-07-9900,03-3230-3000[一部IP電話等] - 交通
- 東京メトロ半蔵門線・半蔵門駅から徒歩5分
半蔵門線・有楽町線・南北線永田町駅から徒歩8分
都営バス都03(晴海埠頭-四谷駅)三宅坂下車徒歩1分 - 公演日時
- 2020年11月21日(土)
12:00開演/14:30開演/17:00開演 - 観覧料
- 一般:6,000円 学生:4,200円
- ホームページ
-
https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/kokuritsu_s/2020/1112.html?lan=j
【インターネット予約】
https://ticket.ntj.jac.go.jp/(パソコン・スマートフォン共通)