2021年3月2日
歌舞伎の“明智光秀”を知る,観る
国立劇場制作部歌舞伎課 横山 陽一
歴史的事件に題材をとった「時代物」と言われるジャンルの歌舞伎作品では,作品が書かれた当時の権力者(徳川幕府)を憚って,実在の人物が名前や設定を変えて登場することがあります。テレビドラマなどを通じて,いま新たな脚光を浴びる明智光秀もその一人です。歌舞伎では「武智光秀」の名前で活躍する武将・明智光秀。国立劇場の3月歌舞伎公演は,「歌舞伎名作入門」と銘打ち,光秀が主人公の『時今也桔梗旗揚』を上演します。『東海道四谷怪談』の作者として有名な四世鶴屋南北による本作は,明智光秀が主君の織田信長を本能寺で討つまでを脚色して描いたものです。光秀といえば,その生涯で室町将軍足利義昭と織田信長という二人の天下人に反旗をひるがえした「謀叛人」のイメージのある人物ですが,作者の鶴屋南北は,史実の信長と光秀の関係を巧みに取り込みながら,反逆へと向かう光秀の心情を力強く描き,南北ならではの新しい光秀像を創り出しました。今回は,お芝居の冒頭に,作品の背景や見どころを紹介する「入門 歌舞伎の“明智光秀”」と題した解説もあります。歌舞伎作品に登場する光秀にクローズアップし,お芝居と合わせて,明智光秀に新たな光を当てます。それでは,物語のあらすじを紹介しましょう。

武智光秀(尾上菊之助)
<あらすじ>世尊寺中納言の饗応役に武智光秀が任じられますが,中納言を迎える仮御殿に張られた幕の桔梗の紋を見て,主君・小田春永(織田信長)は烈火のごとく怒ります。饗応役は森蘭丸に代えられ,春永の命令で蘭丸に鉄扇で叩かれる屈辱を受けますが,光秀は耐え忍びます。蘭丸の取り成しで本能寺に召し出された謹慎中の光秀。春永は不快げに馬盥(馬を洗うための盥)で酒を与え,光秀の領地を蘭丸に譲り,妻皐月が切り売った黒髪を出すなど,光秀を散々に侮辱します。愛宕山の旅宿に戻った光秀の許に春永の上使が訪れます。折からの山嵐,灯の消えた中で光秀は白の裃に着替え,切腹の覚悟を見せます。死装束で「時は今天が下知る皐月かな」と辞世を詠む光秀ですが……
初演の五世松本幸四郎から代々の名優に受け継がれてきた主人公・武智光秀に,役の幅を広げる尾上菊之助が初役で挑みます。春爛漫の3月,国立劇場へ是非お越しいただき,歌舞伎の魅力あふれる歴史劇をお楽しみください。

三月歌舞伎公演『時今也桔梗旗揚』
国立劇場 令和3年3月歌舞伎公演
《歌舞伎名作入門》入門 歌舞伎の“明智光秀”/ 時今也桔梗旗揚
(住所)〒102-8656
東京都千代田区隼町4-1
- お問合せ
- 《国立劇場チケットセンター》(午前10時~午後6時)
0570-07-9900 / 03-3230-3000[一部IP電話等] - 交通
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東京メトロ半蔵門線〈半蔵門駅〉より徒歩5分,
半蔵門線・有楽町線・南北線〈永田町駅〉より徒歩8分
都営バス・都03(晴海埠頭-四谷駅)〈三宅坂〉より徒歩1分
- 公演日時
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令和3年3月4日(木)~27日(土) 午前11時開演(午後1時30分終演予定)
午後3時開演(午後5時30分終演予定)
※10日(水)・11日(木)・19日(金)は休演
※4日(木)・8日(月)・15日(月)・18日(木)・22日(月)・25日(木)・27日(土)は午前11時の部のみ
- ご観劇料(税込)
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1等席7,000円(学生4,900円)
2等席4,000円(学生2,800円)
3等席2,000円(学生1,400円)
- ホームページ
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https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/kokuritsu_l/2020/3124.html?lan=j
【インターネット予約】
https://ticket.ntj.jac.go.jp/(パソコン・スマートフォン共通)