2021年4月30日
「出会い」が生み出す身体と音の饗宴
~5月特別企画公演「二つの小宇宙-めぐりあう今-」~
国立劇場制作部伝統芸能課 原田亮一
国立劇場とアーツカウンシル東京の共催により,「出会い」をテーマに現代的な要素を交えた新たな視点から身体表現の可能性を探るのが,5月特別企画公演「二つの小宇宙-めぐりあう今-」です。今や私たちの生活は新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受けていますが,だからこそ,舞台をとおして再び人々が出会える喜びを分かち合うことを目指し,2つの新作を上演します。
「変化と人間と」は,歌舞伎俳優と文楽人形遣いに音楽は雅楽という貴重な顔合わせによる舞台です。
海辺の松原で天女の羽衣を見つけた漁師の伯龍は,天に帰れずに困っている天女から返してほしいと頼まれますが,それを断ります。嘆き悲しむ天女の姿に心を動かされた伯龍は羽衣を返し,天人は舞を披露して天に帰っていきます…というのは,よく知られた「羽衣伝説」ですが,今回はこの伝説に様々なバリエーションがあることにも注目し,異世界の出会いという視点から創作しました。人間ならざる天女を中村雀右衛門が,人間である伯龍を吉田玉男が遣う人形が演じます。

中村雀右衛門

吉田玉男
音楽は古典,新作を問わず,また作曲でも活躍している雅楽の東野珠実が担当し,二人の心情や天女の舞などを幻想的に,壮麗に奏でます。演奏は,故・芝祐靖の提唱により結成され,御神楽を中心に研究・上演を重ねている神々楽伎座です。
歌舞伎俳優と人形遣いの身体性や表現技法の違いや,雅楽の響きとの調和とともに,生け花や書道,香道などの生活文化を取り入れた演出にも御注目ください。

神々楽伎座
コンテンポラリー・ダンスと声明,意外な組み合わせで新たな世界の出現が期待されるのが「Bridge」です。
国内外で活躍し,しなやかな感性でテーマを深く見つめ,ダンサーの個性と技術を生かす演出・振付に定評がある山田うんが,かねてより深い興味を抱いていた声明との共演に満を持して臨みます。

山田うん(撮影:HAL KUZUYA)
繊細かつ荘厳な音楽性を持つ,仏教儀式で唱えられる声の音楽・声明は,様々な唄・浄瑠璃など日本の伝統音楽の源流とも言われます。その声が感じさせる無重量と肉体がまとう重力,声明が射程に入れる浄土とダンサーが踏みしめるこの地,脈々と受け継がれてきた伝統の声と目の前の舞台でその瞬間に生まれる身体の動きなど,様々な“架け橋”となる意味が込められた作品です。
強靭な身体性と高い技術,そして緊密なチームワークのCo.山田うんの12人のダンサーと,古典から新作まで幅広く上演し,声明の表現の可能性を探求している真言聲明迦陵頻伽聲明研究会と天台聲明七聲會が,唯一無二の時空を作り上げます。

Co.山田うん(撮影:HAL KUZUYA)

真言聲明 迦陵頻伽聲明研究会

天台聲明 七聲會
伝統と現代,音と身体,歌舞伎と文楽と雅楽,コンテンポラリー・ダンスと声明,そしてアーティストと観客…様々な出会いが織り成すひとときに御期待ください。
国立劇場5月特別企画公演 『二つの小宇宙-めぐりあう今-』
(住所)〒102-8656 東京都千代田区隼町4-1
- 問合せ
- 《国立劇場チケットセンター》(午前10時~午後6時)
0570-07-9900,03-3230-3000[一部IP電話等] - 交通
-
東京メトロ半蔵門線・半蔵門駅から徒歩5分
半蔵門線・有楽町線・南北線永田町駅から徒歩8分
都営バス都03(晴海埠頭-四谷駅)三宅坂下車 徒歩1分 - 公演日時
- 2021年5月22日(土) 午後3時30分開演
- 観劇料
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一般:1等席6,000円,2等席4,000円
学生:1等席4,200円,2等席2,800円 - ホームページ
-
https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/kokuritsu_l/2021/5171.html?lan=j
【インターネット予約】
https://ticket.ntj.jac.go.jp/(パソコン・スマートフォン共通)