2021年12月15日
言葉遊びの楽しさ
国立演芸場 営業課 吉成 大四郎
「隣の空き地に囲いができたってね」
「へー」
……誰も笑わないダジャレの代表みたいに昔から言われていますが、れっきとした落語の小話の一つです。もっとも最近は「布団が吹っ飛んだ!」の方がポピュラーかもしれません。こういった言葉遊びの歴史は古く、おそらくは人類が言葉を使い始めたのとほぼ同時にスタートしているのではないかと思います。
このような言葉遊びを、古くは「秀句(しゅうく)」と言いました。「ただ乗り」のことを「薩摩守(さつまのかみ)」と言う洒落が狂言に出てきます。その心は「薩摩守忠度(さつまのかみただのり=平家の武将の一人)」というのですが、さすがに室町のギャグは教養が求められますね。
最近は耳にしませんが、無賃乗車のことを「キセル」というのも古典的な洒落です。江戸時代の喫煙具である煙管(きせる)は両端が金属製で、中間の管は竹など金を使わないことから、途中の運賃をごまかす不正乗車をキセルと呼んだそうです。このように別々のものから共通点を見つけて洒落にするのを「見立て」とも言い、クイズ形式にしたものは「なぞかけ」と呼んで古くから現在まで私たちを楽しませてくれています。「笑点」でおなじみの「大喜利(おおぎり)」も謎かけの作りっこという形になっていますね。
さて、見習い中の若手が寄席の口開けに短い噺(はなし)を語るのを「前座(ぜんざ)」と言いますが、そこでよく出てくるのが「寿限無(じゅげむ)」という噺です。「寿限無寿限無……」という異様に長い名前をつけられた子供を呼ぶのに何度も長い名前を繰り返すのが面白いのですが、これも一種の言葉遊びでしょう。ところで、「日本人のお名前」というテレビ番組には変わった名字がたくさん出てきますが、自分の名前まで洒落で決めちゃうなんて、日本人はどれだけ言葉遊びが好きなんでしょうか。
落語に戻って、噺の終わりのことをサゲと言いますが、最後に洒落を言って終わるのを「地口(じぐち)落ち」と言います。地口というのは秀句などと同じく洒落のことですね。有名なところでは「大山詣り(おおやままいり)」の「毛が(=怪我)なくっておめでたい」などがそうです。くだらないと言えばくだらないのですが、くだらないところへ落として終わるのが落語のいいところとも言えるので、まあ、どうぞお気楽にお出かけくださいませ。
お後がよろしいようで。

国立演芸場
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国立演芸場
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