2022年4月25日
国の重要無形文化財指定から50年~組踊~
国立劇場おきなわ事業課 仲間修
沖縄は「芸能の島」と称されるほど歌や踊りが盛んな地域です。その昔、中国、東南アジア、日本などとの中継貿易をとおして富と繁栄を築いた琉球王国は、アジア諸国との交流の中で様々な異文化を吸収しつつ、独自の美学と感性で世界に誇りうる王朝文化を育みました。その中で、沖縄伝統芸能の精髄とも称される「組踊」は、首里城の御庭での初演から300年の歴史があります。
組踊「執心鐘入」
「組踊」とは、せりふ・音楽・踊りで構成される沖縄独自の歌舞劇です。琉球王府から中国皇帝の使者「冊封使」を歓待するため、宴席の儀礼を取り仕切る「踊奉行」に任命された玉城朝薫が、琉球古来の故事をもとに、能や歌舞伎などの芸能を参考に創作したもので、1719年に「二童敵討」「執心鐘入」の2作品が初めて上演されました。上記2作品と「銘苅子」「女物狂」「孝行之巻」は、「朝薫五番」と称され、現在でも名作として親しまれています。
組踊「銘苅子」
宮廷内で誕生・発展してきた組踊ですが、1879年の王国滅亡で役者や器楽奏者として組踊を支えてきた士族達が職を失い組踊は伝承の危機に陥ります。しかし、野に下った彼らが那覇の街の芝居小屋に活路を見いだし、組踊も庶民の娯楽へと形を変えることで継承断絶の危機を脱することとなりました。また、同時期に県内各地に伝播した組踊は、各地の村祭りの中での奉納芸能の一つとして伝承されています。
組踊「二童敵討」
その後も組踊は、沖縄戦、映画・テレビの隆盛などによる伝承の危機に直面しましたが、熱意ある人々によって復興を遂げ現在へと継承されてきました。沖縄の宝である組踊は、1967年6月、琉球政府文化財保護委員会により朝薫五番が重要無形文化財に、1972年5月には沖縄の日本復帰と同日に国の重要無形文化財に指定、2010年にはユネスコ「人類の無形文化遺産の代表的な一覧表」に記載され、世界的に高い評価を得ています。国立劇場おきなわの組踊伝承者養成研修の修了生からは主役級を務める若手伝承者が育っており、また、新作組踊も次々と発表されるなど、盛りあがりをみせています。
今年は組踊が国の重要無形文化財に指定されてから50年の節目の年にあたり、これを記念した公演も予定しています。現在まで総合芸術として脈々と伝えられてきた魅力あふれる組踊をぜひ生の舞台でお楽しみください。
国立劇場おきなわ
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