2022年9月26日
演出の様々な形―能「天鼓」・狂言「樋の酒」を楽しむ―
国立能楽堂企画制作課 大貫誠之
能・狂言は長い歴史を経ることで、同一の曲でも様々な演出上の工夫が施され、流儀や小書(特殊演出)などにより、多様な上演の様式を有しています。
国立能楽堂では平成26年から「演出の様々な形」と題し、同じ演目を複数回にわたり異なる演出で上演し、その違いを楽しむ公演を開催しています。9回目となる本年は11月と12月の2ヶ月にわたり、狂言「樋の酒」と能「天鼓」をご覧いただきます。
狂言「樋の酒」
主人の外出にあたり、別々の蔵へ入ることになった家来の太郎冠者と次郎冠者。酒蔵にひとり置かれた次郎冠者は寂しさしのぎにと酒を飲み始めますが、それを知った太郎冠者もたまらず飲みたくなり...。この作品では、二つの蔵の間に樋(水などを送るための管)を掛けることで問題が解決して行きますが、その樋は流儀により形状が異なるだけでなく、掛けられる位置にも相違がありますので、同じ作品でも受ける印象は大きく変わります。また、樋だけでなく、家来が蔵に入れられるそもそもの理由もそれぞれ異なる形で設定されているなど、演出の違いは物語の展開にも及びます。
能「天鼓」
天から降ってきた美しい音の出る鼓を持つ少年・天鼓は、鼓を帝に献上せよとの命に背き、川へと沈められます。その後、鼓は誰が打っても鳴らなくなりますが、帝の命により天鼓の父・王伯が召されて奏でると、妙なる音が響き渡ります。これに心を動かされた帝が天鼓を弔うため管絃講(管絃を奏して死者を弔う法要)を行うと、やがて天鼓の霊が浮かび現れ、鼓を奏で、舞楽を舞うのでした。
能では謡とともに囃子(笛・小鼓・大鼓・太鼓)による演奏が重要な役割を果たしますが、演目によっては太鼓が加わらないものもあります。その中で「天鼓」は太鼓のあり・なし、双方の上演形態が伝わり、11月の宝生流では太鼓なし、12月の金春流では太鼓ありで上演されます。また、物語の中心をなす鼓は、舞台に据えられる位置が流儀によって異なりますので、それぞれどのような印象をもたらすか、お楽しみいただければと思います。
さらに、11月は宝生流のみで演じられる「呼出」、間狂言が通常の演式とは異なり上演機会も稀な「楽器」、そして12月は舞の場面で主に囃子の調子が変化する「盤渉」と、両月とも小書により独特な趣が加わります。
「天鼓 呼出」武田孝史(撮影=亀田邦平)
「天鼓 盤渉」本田光洋(撮影=辻󠄀井清一郎)
作品そのものの魅力とともに、能・狂言ならではの演出の多様な姿もお楽しみいただく絶好の機会です。どうぞ国立能楽堂へ足をお運び下さい。
国立能楽堂11月・12月定例公演<演出の様々な形>
(住所)〒151-0051 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-18-1
- 問合せ
- 《国立劇場チケットセンター》(午前10時~午後6時)
- 0570-07-9900/03-3230-3000[一部IP電話等]
- 交通
- JR(総武線)千駄ケ谷駅下車・徒歩5分
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- 都バス(早81:渋谷-早大正門・黒77:目黒-千駄ケ谷駅前)千駄ケ谷駅前下車・徒歩5分
- ハチ公バス(神宮の杜ルート)国立能楽堂下車・すぐ
- 公演日時と演目
・令和4年11月18日(金)午後5時30分開演- 狂言「樋の酒」高野和憲(和泉流)/能「天鼓 呼出・楽器」朝倉俊樹(宝生流)
- ・令和4年12月16日(金)午後5時30分開演
- 狂言「樋の酒」山本則孝(大蔵流)/能「天鼓 盤渉」本田光洋(金春流)
- 観覧料
(税込) - 一般:正面5,000円/脇正面3,300円/中正面3,000円
- 学生:脇正面2,300円/中正面2,100円
- ホームページ
-
https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/kokuritsu_l/2019/11164.html?lan=j【インターネット予約】
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https://ticket.ntj.jac.go.jp/(パソコン/スマートフォン共通)別ウィンドウが開きます