2022年11月25日
宮廷芸能から沖縄各地に伝播した「組踊」
国立劇場おきなわ 事業課 金城夕子
「組踊」は、唱え(台詞)、音楽、踊り(所作)によって構成される沖縄独特の歌舞劇です。そのはじまりは今から約三百年前、十八世紀の琉球王国時代まで遡ります。琉球王国時代、琉球(今の沖縄県)は中国の冊封体制下にありました。中国から琉球王国の新しい国王を任命するためにやって来る中国皇帝の使者である冊封使一行は、帆船による航海であったため、季節風の初夏の南風にのって訪れ、冬の北風によって帰って行ったことから、琉球滞在はおよそ半年間に及びました。そこで王府は冊封使を歓待する宴を催すため踊奉行という役職を設置し、三線音楽や舞踊などの芸能を取りしきらせ、士族とその子弟に演じさせました。1718年に踊奉行に任命された玉城朝薫(1684~1734)は、翌年催される冊封使歓待の宴のため組踊を創始し、1719年の尚敬王の冊封儀礼の際に「二童敵討」と「執心鐘入」が首里城御庭の特設舞台で初演されました。

首里城御庭を復元した特設舞台 組踊「銘苅子」
宮廷芸能として発展した組踊ですが、1879年の琉球処分(廃藩置県)により琉球王国が崩壊すると、禄を失った士族たちにより宮廷から那覇の芝居小屋へ舞台を移して上演されるようになり、また、県内各地へ伝播した組踊が村祭りなどの中で伝承されていきました。各地域では、それぞれの土地に因むものや仇討ち物、筋立ての明快な作品などが好まれ、組踊は宮廷から地域に伝わり親しまれていく中で、音楽を中心とする古典的な型から、手配り(戦の采配)や合戦など台詞中心の庶民的な型に変化していきました。朝薫の作品に登場するのがほぼ宮廷内の人物であるのに対し、地域の組踊にはその世界を広げるため、「間の者(マルムン)」と呼ばれる百姓や商人といった庶民的な人物が登場するなど、組踊は宮廷から地域に伝わり親しまれていく中で、変化していった点が見られます。

間の者(マルムン) 組踊「賢母三遷の巻」
12月に上演される「北山敵討」は、「本部大主」等とも呼ばれ各地で演じられてきた人気の高い作品です。組踊の定番演目である「二童敵討」や「万歳敵討」のあらすじがシンプルで上演時間が短いのに対し、「北山敵討」は二時間に及ぶ作品で、仇討ちを決意するまでの過程や手配りの詳細が色濃く描かれており、道行きの踊りや台詞の応酬、「間の者」の登場も見どころの一つです。物語前半は音楽の聞かせどころでもあり、古典音楽の大曲でしっとりと、後半はスピーディーに、緊迫感あふれる劇展開となっています。本公演では指導に技能保持者の島袋光晴氏・中村一雄氏を迎え、台本の詞章をカットせず全編通して上演します。地域で受け継がれてきた長編大作「北山敵討」、この機会にぜひお楽しみください。

組踊「万歳敵討」
国立劇場おきなわ 12月組踊公演「北山敵討」
(住所)〒901-2122 沖縄県浦添市勢理客四丁目14番1号 国立劇場おきなわ 大劇場
- 問合せ
- 国立劇場おきなわチケットカウンター Tel.098-871-3350(午前10時~午後5時30分)
- 交通
- バス:国立劇場おきなわ(結の街)バス停下車徒歩約1分
- 勢理客バス停下車徒歩約10分
- 公演時間
- 令和4年12月17日土曜日14時開演
- 観覧料
(税込) - 一般¥3,500,大学生¥2,000,3歳以上高校生以下¥1,000
- ※その他,各種割引あり
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