2023年1月25日
声明の世界を覗いてみませんか?
国立劇場制作部伝統芸能課 橋本麗華
「声明」は、僧侶が唱える声楽全般を指す言葉で、「梵唄」とも呼ばれます。法事の時のお経などで、一度は耳にしたことがあるでしょう。その内容は、仏様を褒め称えるもの、場を清めるもの、法要の主旨を述べるもの、更には試験など、実に様々です。まるで歌のような旋律を持つものもあれば、節をつけて言葉をすらすらと読み上げるものもあり、また使用する言葉も、日本語の他、漢文や梵語(サンスクリット語)の音を漢字に当てはめたものなど、非常に多様です。
国立劇場2月声明公演では、天台宗の総本山、比叡山延暦寺の声明を上演します。延暦寺は1200年以上前に伝教大師最澄によって開かれ、同時期に日本に伝えられた真言宗とともに大きな流れとなり、発展してきました。平安末期から鎌倉時代に興った多くの仏教宗派の開祖たちも比叡山で学んでおり、当時の仏教の中心地の一つでした。現在も、天台宗のお寺は全国で3000を超えます。

法華八講(写真提供=天台宗総本山比叡山延暦寺)
本公演では、比叡山の麓にある天台宗の守り神・日吉大社の神前で、年に一度法要を行う、「山王礼拝講」を舞台で初披露します。内容は『法華八講』という、「妙法蓮華経」全八巻の「経釈」(解説)と「問答」を行う法要です。問答は、出題と回答という、テストのような内容ですが、「八講節」と呼ばれる独特の節回しと、漢文調で進む内容に、非日常を味わっていただけることでしょう。「山王礼拝講」では特別に、僧侶のほかに神職も参加します。日吉大社と関係を深めてきた総本山・比叡山延暦寺ならではの法要で、現地でしか見ることができず、また他の天台宗の寺院でも行われません。明治以降の神仏が分離された現代では大変貴重な法要を、様々な声明がお楽しみいただける部分を中心にご紹介します。

参進(写真提供=天台宗総本山比叡山延暦寺)
本公演に限らず、声明公演では、独唱・斉唱のどちらも聴くことができます。そして斉唱になると、時々女性の声かと思うような高い音が聴こえてきます。普段「一つと捉えている音」が本来持っている様々な音、それらが重なることによって聴こえてくる「倍音」と呼ばれる現象で、大変神秘的です。
法事でしか聴いたことがないというそこのあなた、この機会に是非、じっくりと堪能してみませんか?劇場でお待ちしています。
国立劇場 令和5年2月声明公演
比叡山延暦寺の神前法要 日吉大社の山王礼拝講
(住所)〒102-8656 東京都千代田区隼町4-1
- 問合せ
- 《国立劇場チケットセンター》(午前10時~午後6時)
0570-07-9900 / 03-3230-3000[一部IP電話等] - 交通
- 東京メトロ半蔵門線〈半蔵門駅〉より徒歩5分、
半蔵門線・有楽町線・南北線〈永田町駅〉より徒歩8分
都営バス・都03(晴海埠頭-四谷駅)〈三宅坂〉より徒歩1分
※バスの本数が少ないのでご注意ください。 - 公演日時
- 令和5年2月25日(土)午後2時00分開演
- 観覧料
(税込) - 一般:1等席6,000円、2等席5,000円
学生:1等席4,200円、2等席3,500円 - ※その他,各種割引あり
- ホームページ
-
https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/kokuritsu_l/2022/5211.html
【インターネット予約】
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(パソコン/スマートフォン共通)