2023年6月23日
月の光が照らす切ない家族の物語
国立劇場7月歌舞伎鑑賞教室『双蝶々曲輪日記-引窓-』
国立劇場制作部歌舞伎課 中島美琴
家族の絆を描いた物語は、映画やドラマなどでよく見かけるかと思いますが、江戸時代に始まった歌舞伎にも、家族の愛情を主題にした作品が多々あります。国立劇場の7月歌舞伎鑑賞教室で上演する『双蝶々曲輪日記-引窓-』も、その一つです。では、江戸時代に書かれた家族の物語が、どのようなものなのかご紹介しましょう。

南与兵衛後ニ南方十次兵衛(中村芝翫)
主人公は南与兵衛という男で、育ての母(父の再婚相手)と、自分の妻との三人暮らし。与兵衛は、代々村の役人を務める家の跡取りですが、父が死んでからは町人として物売りなどで生計を立ててきました。妻のお早とは遊郭で出会い、駆け落ちして夫婦となりました。新婚の二人の仲は睦まじく、また与兵衛と母のお幸には血の繫がりはありませんが、互いを実の親子のように思い合っている仲の良い家族です。

女房お早(市川高麗蔵)
物語は、中秋の名月の前夜、妻お早と母お幸が役所に呼び出された与兵衛の帰りを待っているところから始まります。そこに突然、一人の相撲取りが訪ねて来ます。濡髪長五郎というこの相撲取りはお幸の実の息子で、20年以上前に他の家の養子になっていました。実は長五郎は恩人を助けるため、やむなく人を殺してしまい逃亡中の身。捕まる前に母に一目会いたいとやって来たのです。

濡髪長五郎(中村錦之助)
一方、役所に行っていた与兵衛は、村の役人に任命され意気揚々と帰ってきます。その初仕事は、お尋ね者の濡髪長五郎を捕まえることでした。妻お早や母お幸の様子などから、お幸と長五郎が実の親子であると見抜いた与兵衛。役目を果たすのか、母のために長五郎を逃がすのか、選択に迫られます……
初演から250年以上経ち時代が変わってもなお、このお芝居で描かれている家族愛は観る人の心を動かします。罪を犯した実の息子と、それを捕らえる立場の義理の息子の間で苦悩する母お幸。母の深い愛情に打たれ長五郎を逃がそうとする与兵衛と妻お早。与兵衛への義理を立てて自首しようとする長五郎。切ないほどに互いを深く思う4人の姿は、家族を大切にする心をきっと思い出させてくれることでしょう。

7月歌舞伎鑑賞教室
7月歌舞伎鑑賞教室では、『双蝶々曲輪日記-引窓-』を歌舞伎俳優による解説付きでお楽しみいただけます。作品を上演する前に、歌舞伎の特徴や作品の見どころなどをご案内しますので、初めての歌舞伎鑑賞におすすめです。午後6時30分開演で、お勤めの方でもご覧になりやすい社会人のための公演や、夏休み期間中に特別料金でご覧いただける親子向けの公演もご用意しておりますので、ぜひこの機会に歌舞伎に触れてみてはいかがでしょうか。
国立劇場 令和5年7月歌舞伎鑑賞教室
解説 歌舞伎のみかた / 双蝶々曲輪日記-引窓-
(住所)〒102-8656 東京都千代田区隼町4-1
- 問合せ
- 《国立劇場チケットセンター》(午前10時~午後6時)
- 0570-07-9900 / 03-3230-3000[一部IP電話等]
- 交通
- 東京メトロ半蔵門線〈半蔵門駅〉より徒歩5分、
- 半蔵門線・有楽町線・南北線〈永田町駅〉より徒歩8分
- 都営バス・都03(晴海埠頭-四谷駅)〈三宅坂〉より徒歩1分
- ※バスの本数が少ないのでご注意ください。
- 公演日時
- 【歌舞伎鑑賞教室】
- 令和5年7月3日(月)~24日(月) 午前11時開演/午後2時30分開演
- ※7日(金)、17日(月・祝)は休演
- ※6日(木)、20日(木)は午後2時30分開演のみ
- 【社会人のための歌舞伎鑑賞教室】
- 令和5年7月6日(木)、20日(木) 午後6時30分開演
- 【親子で楽しむ歌舞伎教室】
- 令和5年7月16日(日)・20日(木)~24日(月) 午前11時開演/午後2時30分開演
- ※20日(木)は午後2時30分開演のみ
- 観覧料
(税込) - 学生=全席 1,800円 一般=1等席(1、2階)4,500円、2等席(3階)3,000円
- 【親子特別割引料金】
- 「親子で楽しむ歌舞伎教室」をお子様とご覧になるお客様は、特別料金でお求めいただけます。
- 親=1等席(1、2階)2,500円、2等席(3階)2,000円
- 子(18歳以下)=全席1,500円
- ホームページ
-
https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/kokuritsu_l/2023/5711.html
- 【インターネット予約】
-
https://ticket.ntj.jac.go.jp/(パソコン/スマートフォン共通)