2023年8月25日
政変の最中に散った若い恋人たちの物語
国立劇場9月歌舞伎公演『妹背山婦女庭訓』
国立劇場制作部歌舞伎課 國府田真穂
昭和41(1966)年に開場した国立劇場。57年にわたり多くのお客様にご来場いただきましたが、施設の拡充に向けた建て替えのため、本年10月をもって一旦閉場を迎えます。現在の国立劇場で最後となる9・10月の歌舞伎公演は、「初代国立劇場さよなら特別公演」と銘打って、義太夫狂言屈指の名作『妹背山婦女庭訓』を、月をまたいだ二部制で上演いたします。
国立劇場
『妹背山婦女庭訓』は、藤原鎌足による蘇我入鹿の誅伐の史実を背景に、架空のエピソードを織り交ぜながら揺れ動く時代の人間模様を映した作品です。第一部の9月は、「日本のロミオとジュリエット」ともいわれる若い恋人たち、久我之助と雛鳥の悲恋を描いた「吉野川の場」を中心とした場面構成でご覧いただきます。
場名にもなる「吉野川」とは、紀伊国の背山と大和国の妹山とを隔てる川のこと。紀伊国の領主・大判事清澄と大和国を守る太宰の未亡人・定高は、領地をめぐって争いを繰り返していました。しかし、大判事の息子・久我之助と定高の娘・雛鳥とは、敵対する家に生まれた者同士とは知らずに恋に落ちます。
吉野川の場 豊原国周筆(国立劇場所蔵)
久我之助と雛鳥が恋仲であることに目をつけたのが蘇我入鹿。大判事と定高の不仲は見せかけのもので、実は両家が結託して自分自身に謀反を企てているのではと疑います。そして、大判事には久我之助を自分に仕えさせるよう、定高には雛鳥を自分の妾に差し出すよう命じ、それが聞き入れられないのならば首を打てと言いつけます。
悲痛な面持ちの大判事と定高は、それぞれ我が子に入鹿の命令を伝えます。久我之助は主君への忠義を果たすために切腹することを決意し、雛鳥も久我之助と結ばれないのならば首を打ってほしいと定高に頼みます。久我之助と雛鳥の最後の願いは「せめて愛する人にだけは生き延びてほしい」というものでした。我が子の思いを受け止めた大判事と定高。どうにか相手の子だけは救おうとするのですが……。
中村時蔵
尾上松緑
定高の中村時蔵、大判事の尾上松緑をはじめとする多彩な顔ぶれでお届けいたします。また、9月公演の白眉ともいえる「吉野川の場」では、客席の左右に花道を二本設える「両花道」の趣向で、吉野川をはさんで展開する物語の世界へお客様を誘います。舞台の上手と下手に分かれた竹本の情感豊かな語りにもご注目ください。
9月の第一部では悲劇に終わる『妹背山婦女庭訓』ですが、10月の第二部では物語が大きく展開し、諸悪の根源である蘇我入鹿が誅伐される結末が描かれます。9月に引き続き、10月の公演にもぜひご期待ください。
令和5年9月歌舞伎公演『妹背山婦女庭訓』
国立劇場 令和5年9月歌舞伎公演
通し狂言『妹背山婦女庭訓』〈第一部〉
(住所)〒102-8656 東京都千代田区隼町4-1
- 問合せ
- 《国立劇場チケットセンター》(午前10時~午後6時)
- 0570-07-9900 / 03-3230-3000[一部IP電話等]
- 交通
- 東京メトロ半蔵門線〈半蔵門駅〉より徒歩5分
- 半蔵門線・有楽町線・南北線〈永田町駅〉より徒歩8分
- 都営バス・都03(晴海埠頭-四谷駅)〈三宅坂〉より徒歩1分
- ※バスの本数が少ないのでご注意ください。
- 公演日程
- 令和5年9月2日(土)~26日(火) 12時開演
- ※11日(月)、19日(火)は休演
- 観覧料
- 一般=1等席(1階)14,000円、 2等席(2階)10,000円、 3等席(3階)4,000円
- 学生=1等席(1階)9,800円、 2等席(2階)7,000円、 3等席(3階)2,800円
- ホームページ
-
https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/kokuritsu_l/2023/532.html
- 【インターネット予約】
-
https://ticket.ntj.jac.go.jp/(パソコン/スマートフォン共通)