2024年5月27日
偶然が生んだ悲劇の名作
―国立劇場6月歌舞伎鑑賞教室『封印切』―
国立劇場制作部歌舞伎課 國府田真穂
ご飯の前なのに、つい目の前にあったお菓子を食べてしまった…。友達と喧嘩になり、つい相手を傷つけるようなことを言ってしまった…。些細なことがきっかけで、つい何かをしてしまった経験は、誰にでもあるのではないでしょうか。
そんな人間の「つい」が生んだ悲劇を描いたのが、江戸時代に人形浄瑠璃や歌舞伎の作者として活躍した近松門左衛門による『冥途の飛脚』です。この作品は人形浄瑠璃として初演されたところ、当時の人々の間で大いに話題になり、後に歌舞伎でも『恋飛脚大和往来』と題名を変え、アレンジを加えて上演されました。国立劇場の6月歌舞伎鑑賞教室では、この『恋飛脚大和往来』から『封印切』の通称で有名な一幕をご覧いただきます。

亀屋忠兵衛(中村鴈治郎)
物語の舞台は大坂。飛脚問屋の若旦那・忠兵衛は、廓で出会った遊女の梅川とすっかり深い仲。忠兵衛は梅川を身請け(身代金を払って自由の身とすること)し、一緒になりたいと願っていますが、身請けに必要な二百五十両の金が用意できません。
そんな中、忠兵衛の友人である八右衛門が梅川を身請けしたいと言い出します。しかし、梅川の抱え主の治右衛門は、梅川を忠兵衛に身請けさせるつもりでいるため、八右衛門の申し出を断ります。すると八右衛門は、忠兵衛の悪口を散々に言い立て、金がないことをあざ笑います。それを聞いた忠兵衛は、ついカッとなって…。

遊女梅川(市川高麗蔵)
歌舞伎では、江戸時代の当時の民衆の暮らしを描いた作品を「世話物」と呼びますが、『封印切』はその代表的な作品の一つです。お互いを思いあっているのに煮え切らない態度をとってしまう忠兵衛と梅川や、恋敵と知って忠兵衛に憎まれ口を叩く八右衛門など、物語の登場人物の行動には現代の私たちにも通じるリアリティがあります。

6月歌舞伎鑑賞教室
お芝居の前には、「解説 歌舞伎のみかた」を上演し、歌舞伎ならではの約束事のほか、「飛脚ってどんな仕事?」「三百両って今だといくら?」「封印って何?」などお芝居を楽しむためのポイントを分かりやすくご案内いたします。
上方和事のはんなりとした芸風が持ち味の中村鴈治郎を中心に、市川高麗蔵ほか充実した顔ぶれでお届けする歌舞伎の名作をお楽しみください。
サンパール荒川にて、皆様のご来場をお待ちしております。
国立劇場 令和6年6月歌舞伎鑑賞教室
解説 歌舞伎のみかた/玩辞楼十二曲の内 封印切
会場 サンパール荒川 大ホール (荒川区民会館)
〒116-0002 東京都荒川区荒川1-1-1
- 問合せ
- 《国立劇場チケットセンター》(午前10時~午後6時)
0570(07)9900/03(3230)3000[一部IP電話等] - 交通
- 東京メトロ千代田線・京成線 町屋駅より都電荒川線乗換 三ノ輪橋方面→荒川区役所前下車 徒歩2分
JR日暮里駅東口より「里22」亀戸行き→荒川区役所前下車 徒歩2分
JR西日暮里駅より「草63」浅草寿町行き→荒川区役所前下車 徒歩2分
東京メトロ日比谷線三ノ輪駅下車 南千住方面3番改札を出て明治通りを王子方面へ徒歩12分(荒川警察署向い) - 公演日程
- 【歌舞伎鑑賞教室】
令和6年6月1日(土)~21日(金)
午前11時開演 (5日(水)、6日(木)を除く)
午後2時30分開演
※7日(金)、17日(月)は休演
- 【社会人のための歌舞伎鑑賞教室】
令和6年6月5日(水)、6日(木) 午後6時30分開演 - 【Discover KABUKI ―外国人のための歌舞伎鑑賞教室―】
令和6年6月20日(木) 午後2時30分開演/午後6時30分開演 - 観劇料
- 学生=全席 1,800円
一般=1等席 6,000円、2等席 4,000円 - ホームページ
-
https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/kokuritsu_l/2024/6615.html
- 【インターネット購入】
-
https://ticket.ntj.jac.go.jp/(パソコン・スマートフォン共通)