2024年10月25日
「忠臣蔵」をもっと楽しむ!
国立文楽劇場企画制作課 中島雄一
国立文楽劇場開場40周年記念として、11月文楽公演では『仮名手本忠臣蔵』と『靱猿』を上演します。『仮名手本忠臣蔵』は全十一段のうち、大序(初段)から七段目までを通して上演し、人形浄瑠璃文楽の魅力の一つである”戯曲としての面白さ”を堪能していただきます。
『仮名手本忠臣蔵』は主君浅野内匠頭長矩に代わり、その家臣が浪人の身となりながらも結束し、吉良上野介義央を討った赤穂事件(1701~03)が題材の作品です。寛延元年(1748)に初演され、作品の登場人物や舞台は幕府に配慮して『太平記』の世界に置き換えてあります。

(左より)大星由良助(七段目)・早野勘平(五段目)・塩谷判官(三段目)
今回は、塩谷判官(浅野内匠頭)が高師直(吉良上野介)に殿中にて斬りつけた罪で切腹となり、駆け付けた家老の大星由良助(大石内蔵助)が復讐を誓うまでを第1部で上演します。第2部では、元塩谷家家臣で主君の刃傷事件の際に不始末を起こした早野勘平(萱野三平がモデル)が、舅殺しの疑いにより腹を切るまでの物語と、祇園の茶屋で遊興に耽る大星由良助の本心が明らかになる場面を上演します。
では、鑑賞の手引きとして『仮名手本忠臣蔵』ならではの演出をご紹介しましょう。まず第1部の四段目「塩谷判官切腹の段」での「待ち合わせ」です。塩谷判官に罪状と処罰(切腹)を上使(幕府から諸大名に派遣した使者)が言い渡すと、「一間もひつそと。静まりける」で太夫の語りと三味線の演奏を止め、舞台上の人形の切腹の演技を見せます。切腹の準備が整えられる間も、太夫は判官の気持ちを持続して息を詰めています。緊迫感を保つため観客の出入りを止める慣習から、ここは俗称「通さん場」と呼ばれています。

おかる(七段目)
次は第2部の七段目「祇園一力茶屋の段」での太夫の掛合での演奏です。文楽の演奏は太夫1人と三味線弾き1人の組合せが基本ですが、この段は初演以来1人1役の掛合による演奏で、せりふ劇の要素が強い場面となっています。また、太夫は通常上手(舞台に向かって右)の「床」という張り出した舞台で、見台の上に床本を置いて語ります。しかし寺岡平右衛門を勤める太夫は、場面の前半では下手(向かって左)に設けられた1人用の床で、無本(見台も床本もなし)で語ります。
その他の演出等は、日本芸術文化振興会のサイト「文化デジタルライブラリー」を御覧ください。
第2部の幕開きを飾る『靱猿』は狂言を元にした作品で、めでたい舞を取り入れています。登場人物の一人である大名は通常立役(男性役)ですが、今回は“女大名”で上演します。
11月公演にどうぞご期待ください!
国立文楽劇場
(住所)〒542-0073 大阪府大阪市中央区日本橋1丁目12番10号
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- 《国立劇場チケットセンター》(午前10時~午後6時)
0570-07-9900,03-3230-3000[PHS・IP電話] - 交通
- 大阪メトロ・近鉄 日本橋駅7号出口より徒歩1分
- 公演日程
- 公演日時11月2日(土)~11月24日(日)※12日(火)は休演
【第1部】11時開演【第2部】4時開演 - 観劇料
- 一般1等:8,000円 2等:6,000円
学生1等:5,600円 2等:4,200円
通し割引1等:14,000円(第1部・第2部を同時購入の場合) - ホームページ
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【舞台芸術教材で学ぶ:文楽・作品解説 仮名手本忠臣蔵】
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