2025年1月24日
「声明」で非日常的な音楽体験を
国立劇場制作部伝統芸能課 金子 慎
「声明」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。
2月1日(土)午後2時からティアラこうとう(江東公会堂)大ホールにて、国立劇場令和7年2月声明公演「真言宗智山派 総本山智積院の声明」が行われます。
声明とは、仏教儀式の中で僧侶が唱える声の音楽です。後の日本の伝統芸能の礎となる要素を多く含み、西洋のグレゴリオ聖歌にもたとえられる最も古い日本の音楽の一つです。日本には仏教とともに伝来したとされ、天平勝宝4年(752)の東大寺大仏開眼供養会では声明が唱えられた記録が残っています。国立劇場では、開場当初から、その音楽性や後世の音楽への影響力に注目し、多くの宗派の声明を舞台で紹介してきました。

寺院での法要で声明が唱えられている様子
声明は基本的に無伴奏で唱えられるため、声の響きを鮮明に感じることができます。静寂な空間に響く美しい声や、音の高さを上下に揺らす「ユリ」に代表される華麗な技巧、多くの声が重なることで生まれる倍音によりもたらされる豊かな響きなど、多くの聴きどころがあります。荘厳な雰囲気の中で流れる清らかで美しい音楽は、普段の生活の中にはない特別感があります。こうした非日常的な体験も声明鑑賞における大きな魅力の一つです。

2月声明公演
2月声明公演では、智積院の「大般若転読会」を上演いたします。
智積院は京都東山にある真言宗智山派の総本山で、成田山新勝寺、川崎大師平間寺、高尾山薬王院などの大本山をはじめ、全国に三千の末寺を有します。智積院に伝わる声明は「智山声明」と呼ばれ、雅楽などの都の文化の影響や、都言葉の雰囲気に育まれたことで、やわらかい響きを生み出すことが特徴です。
「大般若転読会」は、玄奘三蔵により訳された『大般若波羅蜜多経』六百巻を転読して国土安穏・除災招福を祈念します。転読とは、経題や訳者名、または経の一部だけを読んで全体を読むのに代える読み方のことです。遠くまで響く大きな声で唱え、折本の経本を空中に開き流して転読を行うため、その姿は勇ましく圧巻です。これにより、災いの根源である悪魔を防ぎおさえる読経の威力を強めるのです。このように、音も所作も見どころが多い内容となっています。
初めての方にぴったりの公演ですので、この機会に声明鑑賞をしてみませんか?
会場でお待ちしています。

転読の様子(令和6年度文化庁芸術祭オープニングより)
国立劇場 令和7年2月声明公演「真言宗智山派 総本山智積院の声明」
解説 声明の魅力
二箇法要付大般若転読会 付楽法要
会場 ティアラこうとう(江東公会堂)大ホール
(住所)〒135-0002
東京都江東区住吉2-28-36
- 問合せ
- 《国立劇場チケットセンター》(午前10時~午後6時)
0570(07)9900/03(3230)3000[一部IP電話等] - 交通
- 都営地下鉄新宿線・東京メトロ半蔵門線住吉駅 A4出口より徒歩4分
バス JR錦糸町駅前より(東22)東陽町駅前行き〈住吉駅前〉徒歩5分
バス JR錦糸町駅前より(錦11)築地駅前行き〈住吉駅前〉徒歩5分
バス JR錦糸町駅前より(錦28)東大島駅前行き〈江東公会堂前〉徒歩1分 - 公演日程
- 令和7年2月1日(土)午後2時開演(午後4時15分終演予定)
- 入場料金
- [一般]1等席6,000円 2等席5,000円 [学生]1等席4,200円 2等席3,500円
※障害者の方と介護者1名は2割引き - ホームページ
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【インターネット購入】
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