2025年3月25日
お客様からの視点を経て、作品の強度を上げる
──こつこつプロジェクトStudio公演『夜の道づれ』
新国立劇場 制作部演劇 広報担当・杉田亜樹
小川絵梨子演劇芸術監督が、その就任とともにスタートした「こつこつプロジェクト」。日本では1カ月から1か月半程度の稽古を経た後上演するというスパンでの創作が多い中、1年という長い期間をかけて、参加者が話し合いやトライアンドエラーを重ねて、作品を育てていく企画です。節目ごとに試演会を行い、その都度、上演作品がどの方向に育っていくのか、またその方向性が妥当なのかを、演出家と芸術監督、劇場スタッフが協議を重ね、創作を進めていきます。
この「こつこつプロジェクト」に参加した演出家の一人、柳沼昭徳さん。京都を拠点に活躍する劇団烏丸ストロークロックを主宰しています。そんな柳沼さんが「こつこつ」する作品として選んだのが、三好十郎によって書かれた『夜の道づれ』です。
1950年に文芸誌「群像」に初出、敗戦後の夜更けの甲州街道をとぼとぼと歩いている、男二人の一種のロードムービーのような戯曲です。実際に夜の甲州街道で見聞きしたことをありのままに取り上げた、「いわばドキュメンタリイを志したもの」という三好の言葉通り、三好作品の中でもストーリー性は控えめで、とても演劇的実験性の高い作品です。

演出の柳沼昭徳さん(撮影:田中亜紀)
『夜の道づれ』は、2021年から稽古がスタートし、2022年2月に行われた小劇場での試演会後、さらに作品を深めてはどうかという協議がなされ、2024年より再始動。そして、この度4月15日より「こつこつプロジェクトStudio公演」としてお客様の前にお目見えします。
これまでクローズドで行っていた試演を「Studio公演」として公開し、本プロジェクトの現時点の成果をお客様にお披露目いたします。
このStudio公演ならではのポイントが2つあります。1つ目は、「トークバック」の実施。創り手だけではわからない、観客の皆さまからの視点は、作品の強度を上げるための大切な要素。観劇後、演出家や出演者が直接お客様にご感想やご意見をうかがいます。
2つ目は、チケット料金が低価格であること。あくまで「公開の試演会」であるため、全席 2,750円という、お買い求めになりやすい価格でお届けします。
実際に甲州街道を歩くフィールドワークを2回も行うという「こつこつプロジェクト」ならではの稽古も行った本作。試演会を重ねるにつれ、台詞の「発語」と「歩く」という行為が統合された俳優と、観客がまるで一緒に歩いている感覚に陥る不思議な作品へ変化をとげました。

当時の甲州街道の地図を見ながら戯曲と比較中

『夜の道づれ』稽古の様子
(右から)石橋徹郎、金子岳憲"
さらなる作品の発展を目指すためには、たくさんのお客様からの視点が必要です。ぜひ、劇場へお越しいただき、作品のディベロップメントに一役買っていただけますと幸いです。ご来場を心よりお待ちしております!

『夜の道づれ』の公演チラシ
新国立劇場4月演劇公演 こつこつプロジェクトStudio公演『夜の道づれ』
(住所)〒151-0071 東京都渋谷区本町1-1-1
- 問合せ
- 【ボックスオフィス】(10:00~18:00)03-5352-9999
- 交通
- 京王新線(都営新宿線乗入)新宿駅より1駅、初台駅中央口直結
- 公演日程
- 2025年4月15日(火)~20日(日)
※公演時間は下記ホームページをご参照ください。 - 観劇料
- 全席指定 2,750円 Z席(当日)1,650円
※学生割引(5%),ジュニア割引(20%)、高齢者割引(5%)、当日学生割引(50%)など各種割引あり。 - ホームページ