2025年4月25日
5月の国立劇場は「邦楽で聴く義経伝説」を行います!
国立劇場制作部伝統芸能制作課 伊藤 美紀
天賦の軍才をもって平家滅亡の功績をあげながらも、兄の頼朝に疎まれて奥州・衣川で死を迎えた悲劇の英雄・源義経。その波乱万丈な人生は多くの伝説や物語を生み、文学や芸能の世界で語り継がれてきました。この記事を読んでいらっしゃる方も、小説やドラマ、最近だとアニメやゲームで一度は義経の名前を目にしたことがあるのではないでしょうか。
5月17日(土)に国立能楽堂で行われる「邦楽で聴く義経伝説」は、義経と彼の周りの人々にまつわる逸話を多彩な邦楽作品群でお聞きいただける邦楽公演です。

常磐津 《宗清》
源義経の父・源義朝は平家に負けて義経が赤ん坊のころに暗殺されてしまいました。負けた武将の子供は見つかれば殺される運命、義経の母・常盤御前は子供たちを引き連れ平家方から逃げようとしますが、平宗清に見つかり絶体絶命の危機に……。子供を守るため正体を隠そうとする常盤御前と宗清の緊迫したやり取りを迫力ある語りと三味線で描きます。「江戸の義太夫」とも言われ、語り口の重厚さや感情表現の巧みさが特徴的な常磐津節ならではの作品です。
長唄 《橋弁慶》
命を救われた義経は成長して鞍馬寺に預けられ、密かに鍛錬に励んでいました。ある日義経は、丑の刻の五条橋ですれ違った弁慶に、日頃の鍛錬の腕試しと戦いを挑みます。義経の伝説の中でも有名な、後の忠臣・弁慶との一勝負の様子が、大薩摩節という三味線音楽の技法を使った三味線の豪快なフレーズとともに勇ましく唄われます。長唄は江戸時代から踊りとともに発展してきた三味線音楽で、そのときどきの流行にあわせて様々な作品があります。
清元 《吉野山》
義経は戦で数々の武功をあげますが、兄・源頼朝と仲たがいをして追われる身となってしまいました。義経たちが落ち延びた吉野山へ、恋人の静御前が義経の忠臣・佐藤忠信を供に連れて旅立つ様子を、澄んだ三味線と優美な語りで彩ります。清元節も常磐津節や長唄と同じく江戸時代に生まれた三味線音楽ですが、粋で艶っぽい雰囲気が特徴的で、しとやかな情景を描くのにぴったりな浄瑠璃です。前半の「宗清」や「橋弁慶」とは全く異なった雰囲気をお楽しみいただけます。
筑前琵琶 《衣川》
最終的に義経たちは奥州へ逃げますが、頼朝の圧力に抗いきれなかった藤原泰衡により襲撃されます。弁慶が奮戦するも力尽き、義経は壮絶な最期を遂げるのでした。中世から続く盲僧琵琶の伝統を取り入れながら明治時代に新しく考えられた筑前琵琶による、女性的で優美な音色と哀切な語りが、義経や弁慶の最期を彩ります。今回の公演では、唯一異なる楽器で演奏される《衣川》、音色の違いにぜひご注目いただければと思います。

筑前琵琶(過去の公演より)
物語の雰囲気にあった邦楽と講談師・田辺銀冶による演目前のご案内で、邦楽でたどる義経の激動の生涯をご堪能ください。
ご来場お待ちしております!
国立劇場 令和7年5月邦楽公演 「邦楽で聴く義経伝説―英雄の生涯をたどる―」
会場 国立能楽堂
(住所)〒151-0051
東京都渋谷区千駄ヶ谷4-18-1
- 問合せ
- 《国立劇場チケットセンター》(午前10時~午後6時)
0570(07)9900/03(3230)3000[一部IP電話等] - 交通
- JR(総武線)千駄ヶ谷駅下車・徒歩5分
都営地下鉄(大江戸線)国立競技場駅下車A4出口・徒歩5分
東京メトロ(副都心線)北参道駅下車出口1または2・徒歩7分
都バス(早81:渋谷-早大正門・黒77:目黒-千駄ヶ谷駅前)
千駄ヶ谷駅前下車・徒歩5分
ハチ公バス(神宮の杜ルート)国立能楽堂下車・すぐ - 公演日程
- 令和7年5月17日(土)12時開演(午後2時30分終演予定)
- 入場料金
- [一般]6,000円 [学生]4,200円
※障害者の方と介護者1名は2割引 - ホームページ
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【インターネット購入】
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https://ticket.ntj.jac.go.jp/
(パソコン・スマートフォン共通)