2025年5月26日
歌と三線で紡ぐ沖縄のこころ、平和への祈り
国立劇場おきなわ事業課 比嘉啓和
沖縄県では毎年6月23日を「慰霊の日」としており、先の大戦で亡くなった戦没者の御霊を慰めるとともに、恒久の平和を希求する、特別な日と位置づけています。
今回ご紹介する「琉球・沖縄 こころの歌」は、戦後80年にあたる今年の慰霊の日を前に、琉球・沖縄の音楽で“ウチナーンチュ(沖縄の人)”のこころを伝える三線音楽公演です。

古典音楽斉唱「かぎやで風節」(平成31年5月 三線音楽公演 古典音楽の美 より)
皆さんもご存じ、沖縄を代表する楽器「三線」は、14世紀から15世紀ごろに中国から琉球に伝えられたとされています。琉球では、中国皇帝からの使者である冊封使一行をもてなすため、「御座楽」という音楽や組踊、琉球舞踊などがおもに首里城で上演されました。三線は当初、こうした芸能と密接に結びついて宮廷楽器として大事にされ、質が高められます。その頃に歌われたのが今日「(琉球)古典音楽」と呼ばれるもので、約200曲が現代に伝わっています。
沖縄の三線音楽は琉球の時代から、三線の弾き手が同時に歌い手も兼ねる“絃声一体”の関係であることに特色があります。本公演の第一部では、「琉球古典音楽」「組踊音楽歌三線」の人間国宝による独唱をはじめ、古典音楽のなかでも大曲とされる「十七八節」、「茶屋節」の斉唱など、三線の絃の音と歌声の綾で織りなす琉球の香り豊かな音楽をお楽しみいただきます。
廃藩置県後、三線が庶民の間にも広がると、厳かでゆったりとした宮廷音楽とは趣を異にし、人々に歌われ愛されたのが「沖縄民謡」です。空や太陽、海や山など自然のあらゆるものから、生きる上での喜びや悲しみといった人の心まで、生活のすべてを歌で表現できると言ってよいほど、沖縄民謡に歌われる内容は多岐にわたります。現在も新しい曲が次々と生み出されており、その数は数百、数千曲とも言われます。
沖縄民謡のなかには、その時々の社会状況を色濃く反映して作られた曲も多くあります。例えば、出稼ぎや移民をテーマに家族との離別や望郷の念を歌ったり、アメリカ統治下での暮らしや戦後の復興の様子を歌詞に綴ったりするというふうに、民謡は世相を映す鏡でもあります。
本公演の第二部では「戦中・戦後をうたう」と題し、重鎮から若手まで、第一線で活躍する奏者たちが戦中・戦後の沖縄を描いた曲目をソロやコンビでお届けします。

コンビで民謡を歌う徳原清文・伊波貞子(令和6年2月三線音楽公演 名人達の歌情け より)
いつの時代にも人々の心を慰め、生きる力を与えてきた三線は、単なる楽器としての存在を超えて、ウチナーンチュのこころそのものである、とも言えます。琉球古典音楽から沖縄民謡まで、豪華出演陣による演奏を一度に楽しめる本公演で、琉球・沖縄の“こころ”をぜひご体感ください。
国立劇場おきなわ 6月三線音楽公演 琉球・沖縄 こころの歌
開催期間:令和7年6月21日(土) 14:00開演 16:00終演
https://www.nt-okinawa.or.jp/performance-info/detail?performance_id=2657
国立劇場おきなわ
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- 観覧料
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