2025年6月30日
暑い夏にぴったりの歌舞伎の「怪談物」
国立劇場7月歌舞伎鑑賞教室『色彩間苅豆―かさね―』
国立劇場制作部歌舞伎制作課 大久保 慧人
夏が来ると暑くて辛い、というのはいつの世も同じです。エアコンや冷蔵庫のなかった江戸の昔、人々は「怪談物」と言われる、少し怖いお話を芝居小屋(劇場)で見て背筋を凍らせることで、夏の暑さをしのいでいたのかもしれません。国立劇場の7月歌舞伎鑑賞教室では、その「怪談物」の中でも、名作として知られ、初心者にもわかりやすい舞踊劇『色彩間苅豆―かさね―』を上演します。

7月歌舞伎鑑賞教室
この演目は、文政6年(1823)6月、『法懸松成田利剣』(鶴屋南北作)という長いお芝居の中の一幕として初演されました。その後上演が途絶え、伴奏の音楽のみが伝承されていたところ、大正9年(1920)12月に六代目尾上梅幸のかさね、十五代目市村羽左衛門の与右衛門という当時の名優のコンビによって歌舞伎の舞台に復活。すると空前の大ヒットとなり、東京・祐天寺の境内にはその時建立された「かさね塚」が今も残ります。

六代目尾上梅幸のかさねと十五代目市村羽左衛門の与右衛門(国立劇場蔵)
舞台となるのは江戸近郊、木下川の堤(現在の東京都葛飾区と墨田区にまたがる一帯)。ここへ、人を殺めたために追われる男、与右衛門が逃げてきます。その後を、与右衛門を恋い慕うかさねが追って来ます。かさねは、書置きを残して去った与右衛門への思いを捨てられなかったのでした。二人の出会いを回顧しながら、かさねは与右衛門に心の内を訴えます。そこへ流れてきたのは、鎌の刺さった髑髏でした。与右衛門が拾い上げると、それは自らが手に掛けた男のものとわかります。突然苦しみ出し、顔に異変が起きるかさね。実は、かさねはその男の娘であり、与右衛門を怨む男の思いがかさねの顔を恐ろしく変えたのでした。
追手に見つかった与右衛門は、取りすがるかさねを鎌で斬り捨て、立ち去ろうとします。しかし、かさねの怨念は、与右衛門を引き寄せて逃がさないのでした。
美しいかさねと二枚目の与右衛門が人目を忍ぶ恋の様子を見せるくだりや、与右衛門に思いの丈を語るかさねの「クドキ」などが前半の見どころです。それが一転、後半はスリリングな雰囲気の中で、鬼気迫る立廻り、超自然的な力を表した「連理引き」など、手に汗にぎる展開となります。前半も後半も、どこを取ってもまるで錦絵のようで、歌舞伎の様式美が短い時間の内に詰まっています。
中村萬壽のかさね、中村芝翫の与右衛門という二人の至芸にふれることができる7月歌舞伎鑑賞教室。お芝居の前の「解説 歌舞伎のみかた」では、物語のみどころから歌舞伎の持つ魅力まで、坂東亀蔵が分かりやすくご案内いたします。
この公演は全日程を「親子で楽しむ歌舞伎教室」の対象としており、お子様とご一緒の場合、特別料金でご観劇いただけます。また7月25日(金)午後7時開演の「Discover KABUKI ―外国人のための歌舞伎鑑賞教室―」は、英語によるサポートを充実させた公演として開催いたします。
歌舞伎ならではの美しさと変化に富んだ名作舞踊をこの機会にぜひご覧ください。
国立劇場 令和7年7月歌舞伎鑑賞教室
解説 歌舞伎のみかた/色彩間苅豆 ―かさね―
会場 江東公会堂 ティアラこうとう 大ホール
〒135-0002 東京都江東区住吉2-28-36
- 問合せ
- 《国立劇場チケットセンター》(午前10時~午後6時)
0570(07)9900/03(3230)3000[一部IP電話等] - 交通
- 都営地下鉄新宿線・東京メトロ半蔵門線「住吉」駅 A4出口より徒歩4分
JR錦糸町駅前より「東22」東陽町駅前行き→住吉駅前下車 徒歩5分
JR錦糸町駅前より「錦11」築地駅前行き→住吉駅前下車 徒歩5分
JR錦糸町駅前より「錦28」東大島駅前行き→江東公会堂前下車 徒歩1分 - 公演日時
- 【歌舞伎鑑賞教室】
令和7年7月17日(木)~26日(土)
午前11時開演 (25日(金)を除く)
午後2時30分開演 (26日(土)を除く)
※22日(火)は休演
【親子で楽しむ歌舞伎教室】(全日程対象)
令和7年7月17日(木)~26日(土)
25日(金)は午後2時30分の部のみ
【Discover KABUKI ―外国人のための歌舞伎鑑賞教室―】
令和7年7月25日(金) 午後7時開演 - 観覧料
- 学生=全席 2,000円
一般=1等席 6,000円、2等席 4,000円
【親子特別割引料金】
「親子で楽しむ歌舞伎教室」をお子様とご覧になるお客様は、特別料金でお求めいただけます。
親=1等席3,500円、2等席3,000円
子(18歳以下)=全席1,500円
※ご両親でなくても、大人の方とお子様の組み合わせであればご購入いただけます。 - ホームページ
- 【インターネット購入】
-
https://ticket.ntj.jac.go.jp/(パソコン・スマートフォン共通)