2025年7月25日
多言語が響きあい、地球のいまと向き合う新作オペラ『ナターシャ』
新国立劇場制作部オペラ 広報担当 高梨木綿子

オペラというと、豪華な舞台で、ロココ調の衣裳を着た歌手がものすごいボリュームの声でドラマティックな歌を歌うものというイメージが浮かぶ方も多いかもしれません。もちろんそういうオペラもありますが、今、世界中のオペラハウスでは、18世紀や19世紀の名作オペラと並んで、私たちが生きる今の時代に創られた、新しいオペラが日々発表されています。
新国立劇場の大野和士オペラ芸術監督も、日本から発信する新作オペラに力を入れています。この夏また、新国立劇場から、私たちの時代を照射する刺激的なオペラが誕生します。新作のクリエイターは、世界中のオーケストラや音楽祭、歌劇場からの新作委嘱が引きも切らない国際的作曲家の細川俊夫さん、そして、細川さんとも親交の深い世界的作家の多和田葉子さんです。

左より大野和士、多和田葉子、細川俊夫
新作オペラのタイトルは『ナターシャ』。ナターシャはウクライナ語とドイツ語を話し、海の声が分かるという、謎めいた女性。やはり住処を離れ行き場を探している少年アラトと出会い、さらに自称「メフィストの孫」という男に出会って、地獄めぐりに連れて行かれます。その“地獄”というのは、自然破壊や災害にもまれながら人々の欲望が吐き出される、様々な”現代の地獄“。ふたりは言葉が通じないながら、地獄めぐりを共にして心を通わせていきます。若いふたりの絶望と希望が、自分探しの旅のようなストーリーで書かれています。

記者会見に臨む細川俊夫
細川俊夫さんは長年、自然をテーマに、自然そのものや、自然を侵していく人の姿を音楽に写し取ってきました。また、西洋音楽で日本の美学を表現しているのも大きな特徴で、その研ぎ澄まされた音楽は、ヨーロッパやアメリカで極めて高く評価されています。『ナターシャ』はその細川さんのオペラの集大成となる作品とのこと。日本からの新作発表に大きな注目が集まっています。

記者会見に臨む多和田葉子
多和田葉子さんは、ドイツを拠点に日本語とドイツ語で執筆している作家ですが、その作品は非常に実験的なだけでなく、世界人として俯瞰した視点で人間の姿を痛烈に批評するものが多く、自然や環境も創作テーマのひとつです。実はオペラにも大変興味を持っていたそうで、『ナターシャ』では多言語を同時に響かせてひとつの物語を伝えるという、大きな挑戦をしています。多和田葉子さんの書いた言葉が、細川俊夫さんの音楽によって新しい命を吹き込まれ、どんな風に心に届くのか、わくわくするばかりです。
注目の世界初演は8月11日(月祝)、指揮は芸術監督の大野和士、演出はクリスティアン・レート、出演はイルゼ・エーレンス、山下裕賀、クリスティアン・ミードル、森谷真理、冨平安希子ほか、サクソフォーンに大石将紀、エレキギターに山田岳、合唱は新国立劇場合唱団、管弦楽は東京フィルハーモニー交響楽団です。
令和7年度日本博2.0事業
新国立劇場2024/2025シーズンオペラ『ナターシャ』<創作委嘱作品・世界初演>
公演日程:
2025年8月11日(月・祝)14:00/13日(水)14:00/15日(金)18:30/17日(日)14:00
チケット料金:
S席26,400円~D席6,600円・Z席(当日のみ):1,650円
※25歳以下/39歳以下はS・A席5,000円/11,000円になる“優待メンバーズ”あり
https://www.nntt.jac.go.jp/opera/natasha/
新国立劇場オペラパレス
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