2025年12月25日
女たちのドラマを描いた名作、17年ぶり待望の上演!
―初春歌舞伎公演『通し狂言 鏡山旧錦絵』―
国立劇場 制作部歌舞伎制作課 大久保 慧人
初春歌舞伎公演
『ようこそ劇場へ』も12月号となり、令和7年も終わりが近づいてきました。今年一番話題になったものといえばやはり、歌舞伎の女方を描き記録的な大ヒットとなった、あの映画でしょうか。また、関東と関西の展覧会で同時期に紹介された、超"国宝"級の正倉院宝物「蘭奢待(黄熟香)」もメディア等で盛んに取り上げられました。
令和8年の国立劇場の初芝居は、女方の至芸に溢れ、「蘭奢待」もキーアイテムとして登場する『鏡山旧錦絵』を17年ぶりに上演いたします。
『鏡山旧錦絵』は天明2年(1782)、絢爛に文化が花咲いた田沼時代の江戸で人形浄瑠璃として初演されました。人形浄瑠璃の作品のほとんどが大坂で書かれたのに対して、この作品は福内鬼外(平賀源内)作の『神霊矢口渡』と並んで、珍しい江戸生まれの浄瑠璃作品の代表格として知られています。初演から大変な人気で、その時代を代表する俳優たちによる数々の名舞台が重ねられてきました。年若い女性が主人の仇を討つというその内容から"女忠臣蔵"という別名も付けられました。
召使いお初(八代目尾上菊五郎)
このお芝居では、女性の役が中心となって物語が展開することと、お初・尾上・岩藤という主要な三役がそれぞれに際立った個性を持っていることが大きな特徴です。男勝りで主人思いの健気なお初、憎々しい局役で伝統的に立役(男性の役に扮する俳優)が演じてきた岩藤、女方屈指の辛抱役の尾上。三者の性格が絡み合い、緊張感と起伏に富んだドラマが展開します。
局岩藤(坂東彌十郎)
本作は江戸の大名屋敷の様子を描きながら、幕府を憚り鎌倉時代の出来事としています。源頼朝の娘・大姫は、許嫁だった木曽義仲の子・義高の死を悼み、出家を望みます。中老(上級の奥女中の職名)尾上は大姫から大切な尊像を託されますが、お家転覆を企てる局岩藤(尾上の上役)は面白くありません。武道の嗜みのある岩藤は、町人出身の尾上にわざと竹刀の試合をけしかけますが、尾上の召使いのお初が代わりを務め、持ち前の利発さと剣術の心得で岩藤をやりこめます。
尾上への憎しみを募らせた岩藤は、尾上が預かる蘭奢待をあるものとすり替えます。尾上が蘭奢待の箱を上使の前で開けると、中身はなんと岩藤の草履!満座の中で、岩藤は尾上を盗賊呼ばわりして草履で打ち据えます。
陰謀にはまり蘭奢待紛失の汚名を着せられた上、手ひどい屈辱を受けた尾上。お初は普段と様子が違う主人を案じますが、尾上の命令で使いに出されてしまいます。お初は尾上から持たされた手紙が自害を告げる遺書だと気づき、急いで引き返しますが……。
中老尾上(中村時蔵)
国立劇場には襲名後初出演となる八代目尾上菊五郎がお初を二十年ぶりに勤め、坂東彌十郎が岩藤、中村時蔵が尾上にそれぞれ初役で挑むのをはじめ、多彩な顔触れによる充実した舞台が期待されます。そして七代目尾上菊五郎の源頼朝が華やかに舞台を締め括ります。女方の芸の美しさと歌舞伎らしい様式美に溢れた初芝居を、新国立劇場で心ゆくまでお楽しみください!
国立劇場 令和8年初春歌舞伎公演
『通し狂言 鏡山旧錦絵』
新国立劇場中劇場
〒151-0071 東京都渋谷区本町1-1-1
- 問合せ
- 国立劇場チケットセンター
午前10時~午後6時
0570(07)9900 / 03(3230)3000(一部IP電話等) - 交通
- 京王新線 初台駅 中央口直結
- 公演日時
- 令和8年1月5日(月)~27日(火)
午後1時開演
※9日(金)、22日(木)は休演 - 観劇料
- 一般=1等席14,000円、 2等席10,000円、 3等席4,000円
学生=1等席9,800円、 2等席7,000円、 3等席2,800円 - ホームページ
-
【インターネット購入】
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(パソコン・スマートフォン共通)
