2026年1月28日
時を越えて感動をつなぐ舞台
国立能楽堂企画制作課 井関俊介
能と狂言は成立以降650年以上もの歴史を重ね、現代まで演じ継がれる古典劇です。
能は詞を独特な旋律に乗せて歌う「謡」と舞が中心の歌舞劇です。多くの作品が歴史上の出来事や古典文学を題材とし、主人公は照明の当たり具合や角度によって様々に表情を変える能面を付け、謡と舞に想いを込めて心情を表現します。
一方で狂言は登場人物の会話が中心となるせりふ劇で、日常的な出来事を題材に普遍的な人間の滑稽さや逞しさを表現し笑いや涙を誘います。
国立能楽堂では古くから演じ続けられている作品を定期的に上演する他に、過去に上演が途絶えてしまった作品を復元し、現代の舞台上に蘇らせる復曲(ふっきょく)という企画を行っています。
復曲能「名取ノ老女」シテ:大槻文藏
復曲能「名取ノ老女」シテ:大槻文藏 子方:松山絢美
2026年3月企画公演では〈東日本大震災15年 復興と文化〉と銘打ち、復曲狂言「鷺」と復曲能「名取ノ老女」を上演します。国立能楽堂では東日本大震災発生の翌年、2012年から「復興と文化」と題した企画公演を行い、震災という未曽有の災害からの復興における文化の役割を捉え返す機会としてまいりました。
今回上演する能楽「名取ノ老女」は、長らく廃絶曲となっていましたが、2016年の〈復興と文化・特別編〉にて古い台本を基に復曲初演を行いました。本作は東北・名取(宮城県)の地に伝承されている信心深き老女の物語を題材としています。
霊夢を見た三熊野の山伏が名取の里へ訪れ、ある老女と出会います。老女は紀州(和歌山)の熊野三社へ毎年参詣していましたが、今や老いさらばえその願いは叶いません。しかし、老女は名取へ熊野三神を勧請し、変わらず祈りを捧げていました。
山伏は神託が書かれた虫喰いの梛の葉を渡すと老女は涙を流し喜び、名取の里を熊野の地になぞらえ築いた熊野三神の社を案内し、熊野の神の縁起を語ります。そして山伏の求めに応じ老女が舞を舞うと、眼前に奇跡が巻き起こります。
老女による心からの神への祈りが奇跡を呼ぶ本作は、改めて祈りとは何か、そして救いとは何かを観る者へ問いかけます。
復曲狂言「鷺」は、江戸時代まで狂言の流派として存在した鷺流のみに伝わる秘曲です。鷺流は明治以降衰退し、プロとして狂言を上演することはなくなりましたが、いくつかの演目や台本は歴史的資料として保存され、現行の大蔵流と和泉流とは異なったあらすじや演出が残されています。
狂言「鷺」では、醍醐天皇の勅命により捕らえられそうになった鷺が、宣旨(天皇の言葉)を聞いて平伏したため、正五位の位を授けられたという故事を舞台上に再現します。過去大蔵流、和泉流それぞれで復曲し上演されていますが、今回は野村萬斎(和泉流)の演出により鷺流の台本の進行に忠実な形で上演します。
かつての出来事に想いを馳せ、過去と現代をつなぎ観る者が同じ感動を共有でき芸能、能・狂言。
数百年の技巧と経験が培った舞台をこの春どうぞ御覧ください。
国立能楽堂 3月企画公演
<東日本大震災15年 復興と文化> 復曲狂言「鷺」 復曲能「名取ノ老女」
令和8年3月28日(土)午後1時開演
https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2025/7050/![]()
料金 正面=7,000円、脇正面=5,400円(学生3,800円)、中正面=4,400円(学生3,100円)
国立能楽堂
〒151-0051 東京都渋谷区千駄ヶ谷 4-18-1
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