2026年10月27日
文楽の華――三代吉田簑助三回忌追善
国立文楽劇場部企画制作課 中島雄一
国立文楽劇場の錦秋文楽公演では、令和6年11月7日に91歳でその生涯を閉じた人形遣い・三代吉田簑助の三回忌追善として、ゆかりの演目で故人を偲びます。
『本朝廿四孝』奥庭狐火の段 八重垣姫(吉田簑助)
三代吉田簑助は昭和8年(1933)大阪生まれ。6歳で文楽の世界に入り、女方(女性の役)の名手である三代吉田文五郎や二代桐竹紋十郎の薫陶を受け、同36年には師紋十郎の前名・吉田簑助を三代目として襲名します。豊かな天分と弛まぬ研鑽が実を結び、華やかで色気のある芸風で、時代物の高貴な姫から世話物の遊女まで、女方をはじめ様々な役を遣いました。
代表的な当たり役に、初代吉田玉男とのコンビで人気を呼んだ『曾根崎心中』天満屋お初、『仮名手本忠臣蔵』おかる等が挙げられますが、『心中天網島』紙屋治兵衛や『女殺油地獄』河内屋与兵衛等の立役(男性の役)も勤めています。
平成10年(1998)秋に脳出血で倒れましたが、必死のリハビリで翌年夏より舞台に復帰、以降も充実した舞台を勤め、人間国宝、文化功労者、日本芸術院会員など数々の栄誉に輝きました。令和3年4月国立文楽劇場『国性爺合戦』錦祥女が、最後の舞台となりました。
第1部『心中宵庚申』は、近松門左衛門円熟期の作品で、お千代と半兵衛の夫婦が、お互いの愛情と親への義理との板挟みとなり、ついには心中を選ぶという物語です。簑助は、昭和40年のNHK大阪放送局での復活上演の際、当時32歳という若さでお千代に起用され、初代玉男との清新なコンビが誕生しました。薄幸なお千代を抒情豊かに遣い、長らく持ち役とした簑助は、「夫婦の心中という情愛の深さがにじみ出る、自分としては大変好きな役」と述べています。
第2部『妹背山婦女庭訓』では、大和地方を舞台に蘇我入鹿打倒を志す人々を描く壮大な物語の中から、図らずも政争に巻き込まれたヒロイン・お三輪の悲恋を上演します。素朴で可憐な田舎娘でありながら、悲劇的な最期を迎えるお三輪を情熱的に演じた簑助は、劇中の重要な小道具である「苧環をたいせつに、という気持ちを忘れないことが一番」と述べています。
第3部『本朝廿四孝』では、長尾(上杉)・武田の両家間の争いと足利将軍暗殺事件を背景に展開する物語の中から、諏訪湖の伝説を取り入れた、謙信の娘・八重垣姫の恋と奇跡の物語を取り上げます。八重垣姫の激しい恋情や姫らしい気品を巧みに表現した簑助は、「赤姫の衣裳の華やかさに人形遣いが振り回されないように、負けないように、そしてなおかつ、その赤の気品を崩さないように保つことが大切」と述べています。
亡き師を偲び、門弟たちが中心となって、芸術の秋に相応しい舞台を繰り広げます。ご期待ください。
三代吉田簑助三回忌追善 10・11月錦秋文楽公演
10月31日(土)~11月23日(月・祝)
【第1部】11時開演 【第2部】2時15分開演 【第3部】5時45分開演
※11月6日(金)、16日(月)は休演
https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/bunraku/2026/2026bunraku11/![]()
【各部】¥6,500(学生¥4,600) ※障害者の方と介護者1名は2割引です(他の割引との併用不可)
【三部セット割引】¥18,000 ※三部セット割引は、第1部・第2部・第3部を同時に購入した場合にのみ適用されます。
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