イベント情報
開催日 | 2024年2月29日(木)18:00〜 |
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開催場所 | 菊乃井本店 |
参加人数 | 14名 |
和食ユネスコ無形文化遺産登録10周年を記念し、文化庁「食文化振興加速化事業」の一環として、登録無形文化財「京料理」と共に育まれてきた文化や歴史を体感いただくイベントを実施。
今回の会場は「菊乃井本店」。3代目主人・村田吉弘氏は「日本料理を正しく世界に発信すること」を自らのライフワークとして掲げ、和食のユネスコ無形文化遺産登録を進めた中心人物の一人でもあります。
「先祖は、豊臣秀吉の妻・北政所が茶の湯に使った菊の井を守ってきた茶坊主でした。この辺りは、元々は高台寺の山林やったんですが、1850年、開拓許可を頂戴し、6代目が隠居を建てたのが始まりで、その建物は今なお残っていています。
今、皆さんがいらっしゃるこの部屋は、100年ぐらい前、祖父の代に作ったものです。うちは、だいたいが書院造りで、茶室は一つだけしかないんです。お茶方の料理屋さんなんかは茶室が集まっているところもありますし、料理屋によってしつらいもいろいろです。うちは侘びない料理屋で、しつらいも料理も派手なんです」。
村田吉弘氏の言葉通り、今回の会も、美味しさと美しさを追求した華やかな料理が供されました。
まず出された八寸は桃の節句に合わせ、貝桶に盛り付けて。有職家のみが使える色を用い、菊や桐の御紋を描かれ、桃色の紐をほどき、蓋を取り、いただく前から目を楽しませてもらえました。
また、強肴に登場した海苔鍋は、伊勢エビが大胆に盛り付けられ、見た目のインパクトも抜群に。海苔と伊勢エビの香りが相まって、鼻をくすぐりました。
料理だけでなく、空間やしつらいにこだわる村田吉弘氏。この日の調度品も、徳川家伝来の伊藤若冲の軸や尾形光琳の硯箱と文箱、中国・明時代の香炉と卓、辻村史朗の花入れなど、美術館に展示されていてもおかしくない品々が並んでいました。
「美術品を美術館の箱に入っている状態で眺めるのではなく、本来あるべき場所で楽しめる。料理屋は『リビングミュージアム』です」と、村田吉弘氏は常々語られています。
会の最後は、4代目・村田知晴氏の挨拶で締めくくられました。
「大将(吉弘さん)の思いを引き継ぎ、より一層みなさまに満足していただける店造りをしていきたいと思っておりますが、その気持ちを察してか、大将は『同じことをやり続けていても無理やで』とよく話されます。
大将は先代から受け継いだ時、店は建物以外全部変えたと言われるんですが、変えたからこそ生き残れているんだなと実感する日々です。20年、30年前と同じ料理を出している京都の料理屋さんはたぶんないと思います。
いつ食べても『変わらずおいしいですね』って言われるためには中身をガラリと変えていかなくてはいけない、それこそが京都の文化の継承なのかと、少しずつわかってきた気がします」。
参加者たちは、料理はもとより、営業形態やもてなし方も時代と共に変化し、未来に繋ぐ京料理の歴史を改めて知る夜になりました。